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迷宮の
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迷宮の 4

イツリの言葉を受けて、アサミもそちらを見た。そこでは確かに、かすかだがなにかが発光している。
アサミはそれを拾い上げた。

「“石”だ…」

それは金色に発光していて、他のとは少し毛色が違うが、間違いなく“石”の一つだった。

「えっ?ホントに?…じゃあこれで、この部屋は終わりってこと?」
「まさか…。いくらなんでも簡単過ぎる…」

「じゃあ…」と、イツリがさらになにか言いかけた、その瞬間。
バタンッ!と音がして、ドアが閉まった。

「!…な、なに!?」
「…なるほど。これがこの部屋の…」
当然の如く部屋は暗闇に包まれた。

「あまり意味は無いだろうけど、目が慣れるまで少し動かないようにしよう」

アサミの提案にイツリは頷く。
しかし暗闇では動きが見えない事に気付き、慌てて声を出した。
「うっ…うん!」
「どうした?」
イツリの発言が不自然だった為、アサミは訝しんだ様だ。
「ううん。大丈夫」
アサミは気になったが、特に追求はしなかった。


暗闇が与える恐怖心は思ったよりも強い。
ましてや、何があるか予想出来ない空間に身を置いているのだ。

「気付いてるか…?」
「え?」

唐突にアサミが口を開いた。なんのことだかわからないイツリは、変に高い声をだしてしまう。

「なにが…?」
「…この“石”は、部屋の、壁の近くにあったろ。僕が手を伸ばせば、もうほとんど届くくらいだった。でも…」

言いながらアサミは“石”を持ったほうの手を壁のほうに伸ばした。イツリには、光る“石”が横に移動したように見える。
アサミの言う通り、その“石”はすぐ横にあった壁にぶつかるはずだった。
だが…。

「うそ…!」

その光は、本来壁に阻まれるはずだった空間を通過した。

「そう。壁が消失している。さらに…」

アサミは次に“石”を高く放りあげた。
天井に弾き返されるはずのそれは、それをすりぬけて高く放物線を描き、落ちてくる。

「天井も、だ」

「…どうなってるのかしら?」
「わからない。けどじっとしてても始まらないな」

ライトがわりに“石”を持って、アサミは歩きだした。

「はぐれないようにしなくちゃ。見失っちゃう」
「そうか。光がないからね」

予想はしていたが、やはりどれだけ歩いても壁に突き当たることはなかった。どれだけ歩いても、ただ暗闇が広がるのみである。
やがて二人は疲れて、その場に座り込んでしまった。

「もういや!もしかして閉じ込められたの!?」

イツリがいらついて大声をだした。だがその声も、暗闇の中に反響して虚しく消えていく。

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