迷宮の 15
あらかたピースを集め終わったイツリは、折角だから、という理由と、この部屋を解く鍵を考えながらの良い時間潰しになるという理由で、ジグソーパズルを完成させてみようと思った。
「あ、ついでに思いついた事この本に書いておこう」
剥がしたフィルムの上に無造作に置かれたピースを左側に、はめ込む板を正面に、開いた白紙の本と鉛筆を右側に置き、イツリはジグソーパズルを始めた。
普通ピースの裏側は素材の色をしているものだが、これはご丁寧に裏側まで白い曲者だった。
「難しそう…」
そう言いながらも、こういった難門に立ち向かうのが決して嫌ではないイツリは、寧ろこの状況を楽しんでいた。
ピース集めに多少の疲れを感じていたイツリは、寝そべりながらジグソーパズルに没頭した。
それからおよそ3時間、いや2時間だろうか。
イツリの目の前には約3分の1程度はめ込まれたジグソーパズルと、2ページ目の半分くらいまで、部屋にある物や、関係無い事、石が出る条件について考えた結果等が書かれた本があった。
「んーっ!」
と伸びをし、飽きたのかマネキンの肩に梟を置いてみたりした。
「さすがに白一色だから目がチカチカしてきた」
何度か瞬きをし、欠伸をしながらジグソーパズルを再開する体勢に戻った。
「うーん……石が何処かに隠されているとしても、結構探したのに無いとなると、まだ条件を満たしてないんだよね」
再度部屋を見渡す。
「……」
完全だ。ありとあらゆる物が完成している。一部を残して……
「未完成のジグソーパズル」
完全でない。
「何も着ていないマネキン」
完全でない。
「何も書いていない本」
ある意味では完全。しかし自分が不完全にしてしまった。
「完全・完成が鍵…かな」
思案の末、と言うよりもうほとんど完成しかかっているジグソーパズルを無駄にしたくないという思いで、イツリはそう結論付けた。
「でも……この本。どうしよう?」
色々な事を書き連ねた結果、内容は支離滅裂で、とても完成と言うには程遠い状態だ。
「消す物も無いし……」
幸いページ数は残り2ページ程度、といった状態だ。
「ちょっと無理矢理だけど、これでいっか」
イツリが書いたのは『完』の一文字。
ページが一枚余ったので、『あとがき』とだけ書いてジグソーパズルに戻った。
イツリは、本に書くあとがきの内容を考えながら、ジグソーパズルの最後のピースをはめ込んだ。
「何も起きないなぁ……次」
部屋の中の未完成の物を探す。
「マネキン……さっきのフィルムでもかけてみようかな」
自分の服を着せるのは躊躇われた為、イツリは鏡から剥がしたフィルムを自ら纏うマントのように被せた。
「これでよし、後は……これかな?」
鏡は映す事を目的として作られている。
ならば、自らの姿を映す事で完成するとイツリは考えた。