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迷宮の
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迷宮の 14

部屋の中央よりやや手前には、なにかの枠組みがある。そしてまわりには、白いジグソーパズルのピースが散乱している。ホワイトジグソーというヤツだろう。
他にも隅にはロウソクや梟の彫刻があり、さらにはビリヤードの玉や造花など、とにかく部屋はありとあらゆるものが無作為に置かれている。散らかっているといったほうが正しいかもしれないが。
そしてもちろんそれらは、明度の高い白以外の色を一切含まないという点で共通していた。
「白い部屋、か」
言いながらイツリは、洋服かけになっている壁のちょうど反対側の壁に目をやった。
そこには、大きな鏡があった。枠組みはもちろん白だが、鏡の中には白でないものがひとつ映りこんでいる。
イツリ自身だ。
「石が白くないのなら、当然石は白くないものに隠れている。この部屋で白くないものは、私だけ、か」
イツリは鏡に映った自分の姿を眺めながら呟いた。
「簡単、簡単」
服のポケットを探る。“石”はきっと、自分の体のどこかに現れているのだろうとイツリは考えた。
「あれ?」
だが、それは外れていた。
イツリは羽織っていたマントを揺らした。もしかしたらどこかに“石”が引っ掛かっているのではないかと思ったのだ。しかしそれもない。
「……どういうこと? 石は白くないものに紛れているワケじゃないの?」
イツリは改めて部屋を見た。真っ白なガラクタで、雑然としている。
「もしかして、石も白いとか……」
この中からそれを探すのかと思うと、うんざりした。
部屋には本当に、大小様々なものがある。
例えば表紙にも裏表紙にもなにも書かれていない白紙の本。白く染められたお城の模型。等身大のマネキン。
イツリは意味も無く、マネキンと同じポーズを取ってみた。

「うーん……何も起こらない」
イツリは何だか気恥ずかしくなって俯いた。

そこで手に持っている鉛筆に目が行き、石が白いなら全てを黒く染めれば良いのではないか、と閃いた。

「でも、全部黒くするにはどう考えても鉛筆が足りないよね……どうしようかな」

何から染めるか、部屋をもう一度見回すと、先程自分の姿を映し出していた鏡が、特殊なフィルムが貼ってあるようで、正面からでないと映らない事に気付いた。
「この……フィルム剥がれないかな……っ」
指でカリカリとしながら剥がそうとすると、意外にもあっさりフィルムが剥がれた。

「なーんだ……あっけない」

しかし、剥がしたは良いが何に使うかまでは思考が及ばなかった為、イツリはしばし思案した。



イツリは考えている時に歩き回る癖があり、そこでジグソーパズルのピースを蹴ってしまった。

「まさかこの中に石が紛れ込んでるなんて事は無いよね」
微かな望みを賭け、踏んで滑って転んだりしないように、そこら中のピースを集め始めた。

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