迷宮の 11
そんな調子で質問は続いた。そして……
「――不可欠」
「――間違ってはいない」
「――実と抜け殻の関係に近い」
「……」
順調に答え続けたが、恐らく最後であろう問いに詰まった。
アサミは反芻する為に問いを明確な文章にした。意味は無かったが……
「『僕とは何だ』!?」
【イツリ】
イツリも同じく詰まっていた。
これは答の無い問い。当然の事と言えよう。
イツリは考えた。
「……」
時間の感覚がなくなる。
「……」
『門の突破』が頭から消え去る。
「……」
考えに考え――
「……」
遂に回答した。
「何度も考えたけど、今の私にはこの答しか無い。“私とは他者との交信により構築される存在”」
次の瞬間、光に包まれた。
【レベル二】
イツリが門の内側に出ると、そこには既にアサミの姿があった。
「疲れたね、あれは」
「うん……どう答えた?」
「……神経系の複雑な物質的構造により不思議にも生じたもの。それ以上は分からないし、この見解もこれから徐々に変わっていくかも知れない、と答えた」
「突破条件は何だったんだろ……」
「分からないし、今考えても意味はない。次の部屋に行こう。ゆっくり休める部屋が当たるといいけど」
アサミはある感覚に気付いていたが、それが眠いという感覚だと思い至る事は無かった。
……数十分後。
二人は大小様々な蝋燭が床一面、無数に転がっている部屋にいた。
「前にも誰か入ったらしい。それも結構多く」
「うん…確かに」
扉から部屋中央にかけて道ができていた。潰れた蝋燭の道だ。潰れた蝋燭の割合は中央にいくほど多くなっていた。
「嫌な感じがする……まだ使える物をゴミにするのは」
二人は最初の方こそ蝋燭を潰さぬよう転ばぬよう摺り足で歩いていたが、進むにつれ蝋燭の量が増え、足が怠くなり上転ぶ心配も霧消。
そんな訳で二人して蝋燭の上を歩いている訳だが、他の彷徨者も同じ思いをしたらしい。扉の周囲だけ蝋燭が無い。
「……と同時に快感でもある。こは如何に」
「え?何て?」
「いやちょっと言ってみたかっただけ……とにかくこれだけ蝋燭があるのに火をつけない道理はない。どうやら燭台もあるみたいだし」
そう言ってアサミは爪先で足元を探り、蝋燭の中に紛れていた金色の燭台を掘り出した。