迷宮の 12
部屋の中央には、他の彷徨者が集めたと思しき使用済みの燭台が幾つか埋まっていた。
ふとイツリが何かに思いあたった。
「この部屋の場合、“石”が出るのは一回だけかな」
「“石”の出現条件が、たくさん火を灯す事ならそうなんだろうね」
それから暫く二人は燭台を探し続け、三十集まった所でそれら全てを並べてみた。
「そういえば火は?」
「埋まってた」
そう言いアサミは燐寸箱を示し、どう火をつけるか考えた。
燭台も蝋燭もどうやら大きさは七通りで、大きさ毎の数はバラバラだった。
「全種類一本ずつ火をつける……は簡単過ぎか。もう少し手掛かりを集めよう」
アサミは取り敢えず一番大きな蝋燭二本に火を灯し、イツリに一本手渡した。
「もう少し調べてみよう」
しかし何処をどう探しても何の手掛かりも見つからない。
「何だ?ここにはどんな謎が隠されているんだ?」
「手掛かり何にも無いよ……壁も床も調べたのに」
「ん」
「え?何か気付いたの?」
「そういや天井は見てないな……試してみるか」
アサミはそう言うと、最初の物より少し細い蝋燭を七本集めて手に持ち(この数だと安定する)、纏めて火をつけた(別々にするより光量がふえる)。
文字……二文あった。
「『火をつけずに一時間』、『一度でもつけると“石”はない』……」
「懐中電灯でも持ってたらな……やられた」
部屋の攻略に失敗したアサミ。成功率が高く失敗に慣れていない彼にとっては、今回の精神的なダメージも小さくはない。
「早く出よう……もうここに居ても無意味だ」
「アサミ」
「何?」
「燐寸と蝋燭持ってかないの?」
「ああそうか、うっかりしてた……何だか頭がぼんやりしてて。きっと何処かで役に立つよね」
アサミは燐寸箱と蝋燭数本を、のろのろとしまった。
イツリはその様子を見て思った事を口にした。
「アサミ、もしかして“眠い”の?」
「ん……そうかも」
「ここで休めば?」
「いや、次の部屋でいい」
イツリは世話焼きなのか?何となくおかしくなったアサミは、吹き出すのを堪える努力をしつつ、次の部屋に向かうべく歩み始めた。