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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 86

葵川は頭を掻きつつも言う。
「今から言う事は機密事項だ、首相を初めとする日本要人暗殺計画が発覚した、首謀者はナチス党の日本支部長で黒幕は本国の海外秘密党員統括長だ。ソウルにアジトがあった」
「!!!」
「幸いにして計画は未遂に終わり、日本支部長を初め全員は逮捕。その暗殺計画が潜水空母艦載機による誘導弾の精密爆撃……今回のやり口と似ているのだよ」
「アイゼンハワードが言う“影の政府”は亜米利加建国以前から存在していたと言うが、我が国にもその手を伸ばしてきたのはここ数年と見るべきだろう」
「はぁ、そう言える根拠は」
「まっ、俺も干されていた時期に妙な連中が接触してな……俺は興味もなかったが一応軍警察や憲兵隊に居る同期に不審人物として情報は提供している」
「!!!」
「よく消されずに済みましたね」
「こう見えても海軍の三四郎とも若い頃は云われたからな」
葵川は柔道を得意としており、その動きは今でも劣らない、東大時代には学生との交流の為に柔道の臨時師範も務めたほどで、何度か襲撃を受けるも自ら犯人をシメ落した。
「司令官も人が悪いですな」
「そいつらがナチス党の日本支部かどうか知らんが、ともかくそのUボートを拿捕出来れば上出来だろう」
「……やるのですか?」
「あちらにも面子って言うもんがある、使える戦艦があるのならYAMATO型も使うさ」
葵川の読みは正しかった。カナダ海軍は空軍と共に大規模な潜水艦狩りを実施、そして米国大西洋艦隊の予備部隊は新太平洋艦隊に所属しているトーマス.グラハーとラサフォード.オールコックとそれを護衛する駆逐艦群と合流したのである。
「ハドソン湾の捕鯨会社のキャッチャーボートがブイを付けている筈、問題は回収役の潜水艦がどれほどいるかだな」
ハドソン湾から最短で独逸本土まで行く航路を重点的に警戒した。複数の情報から敵機は水上機や飛行艇ではないからだ……幾らナチス独逸第三帝国言えとも大西洋を渡りきれるはずもない、爆撃までかなり飛ばしていたからだ。
「もしかして機体を乗り捨ててUボートが回収すると」
「自爆装置が搭載出来るのならな……ちょび髭伍長の事だ、きっと持ち帰れと厳命しているはずだ」
トーマス.グラハーの艦長であるフェルナント.ヴィスト.タガワ大佐は実に破天荒な人生を歩んでおり、このとんでもない戦艦の艦長になった少将である。ハワイ講和条約までは同胞移民の監視で所謂窓際族であった訳で彼自身も米軍を辞職する寸前で辞表を出したその日にYAMATO型戦艦の艦長を打診。辞意を押し通そうとしたがペンタゴンやホワイトハウスは多少の無茶は眼を瞑るとトルーマン大統領の直筆の命令書の前に結局船長を引き受ける羽目になった。人員も非白人や白人でも問題を抱えた人員ばかりであったが何とかやっているがホワイトハウスを爆撃した艦載機を出した潜水艦を探し出して攻撃しろと言うには難しい。
「艦長はこの船をどう見てますか」
「素晴らしいモノだ、第二パナマ運河要塞を見越してこれを提供したからな。逆に言えば日本は何としても講和を我々にも納得してもらいたいと思える」
第二パナマ運河要塞は閘門式で無いので艦のサイズを大型化出来る上に通過速度も速い、これはパナマ運河があるとは言え長年米海軍は太平洋と大西洋に其々艦隊を持たなければならない、艦隊行動時に太平洋から大西洋まで行くのも時間がかかっていた。第二パナマ運河構想は前々からあり地質調査にルート検討と進むも予算を初めとする諸事情により中々ホワイトハウスまで行く事はなかったがパナマ運河が日本海軍により壊滅的被害に遭遇して漸く実現する運びになる、更にこれが英国市民及び迫害されているユダヤ人脱出ルートにもなりうるわけだ。
「ホワイトハウスの爆撃は」
「派手な大統領一同暗殺計画、大統領一同生死不明の混乱に乗じて米国に居るナチス海外秘密党員らによる合法的なクーデターと流れる筈だったのだろう」
しかし大統領直々に届いた電話は“ハドソン湾からドイツの潜水艦艦載爆撃機が離陸した”と言う一報により大統領はホワイトハウスで実施される筈の公務を全てキャンセルした。

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