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戦艦空母艦隊
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戦艦空母艦隊 84

亜細亜派遣艦隊では持ち前の韋駄天ぶりを生かして威力偵察やら亜細亜各国海軍の潜水艦訓練支援艦として運用していたが実際は高温高圧缶の試験艦であり機関の扱いには難しかったが通商破壊や拿捕には適していると言える。
「それと香椎を転属させます」
「ほう」
香取型軽巡三番艦香椎は日本帝国海軍士官学校が保有する遠洋航海実習船として建造されるも亜米利加との戦争が避けられない状況になり軽巡として運用されている。軍艦でありながらも居住性を重視した故に装甲が薄く防水区画も簡素と言う有り様であり独逸から伝えられた追加装甲思想や改修で何とか改善している。何よりも航続距離に優れタービンとディーゼル機関併用、少数であるが多種多様な兵装を揃え、講義室や実習室を持つ“動く兵学校”でもあった。この船を含めて三隻は亜細亜派遣艦隊に所属しており潜水艦隊を支援する任務も担う。
「ユ号潜の全艦を投入するのですね」
「うむ、彼らも覚悟を決めたと言う事だ」
何しろ軽巡でありながら戦艦並の艦隊指揮機能を持つ事すら出来るので潜水艦隊の指揮も機材や人材さえ揃えば朝飯前、出来れば東郷型航空巡洋艦がいいのだが限度がある。だからこそ亜米利加との戦争終結が急がれる、普通なら首都を攻撃すればいいのだが遺恨が残る。今の日本政府は同盟国のイングランドとの関係もあるので決してしないだろう。もはや亜米利加政府の決断がこの大戦を決めるのではないか……長引けば英国本土が陥落しナチス独逸第三帝国は世界を支配できる可能性すらある。


この事はホワイトハウスの主や側近らも予想が付いていた。
「大統領」
「日本と講和する」
「影の政府を裏切るとどうなるかおわかりのうえですかな?」
照明を極端に落した執務室にてトルーマンは姿が見えない男と会話をする。
「この際言っておこう、君達はヒトラーに近寄っているそうだが……あの男は成功しない」
「……」
「独裁者とは信頼性が無い王家と同じ事だ、報復にここを爆撃した時には全てを国民の元に曝す。リンカーンの様に暗殺したければすればいい」
ドアの音がした同時に照明が付く。
「大統領」
「世界に通達してくれ……亜米利加合衆国は日本帝国及び同盟国のアジア各国と講和する」
その一報は瞬く間に全米を駆け巡り、電波により関係国に通達された。


一週間後、日本帝国と亜米利加合衆国は講和し布哇平和条約が締結。日本帝国海軍は布哇に駐留していた第一連合艦隊を無条件撤退したのである。それと入れ替わる様に六隻の大和型戦艦が入港する……それは拿捕した亜米利加合衆国海軍旧太平洋艦隊の主力艦の代用艦であり、敵に塩を送ると言う策でもあった。
奇策にも程があるが米海軍に今更航空戦艦化した六隻を返還するよりはインパクトがある。何よりも機関や兵装を含めた艤装全般の仕様に関しては非の打ち所が殆どなく、敢て言えば水偵の搭載設備位で米海軍はヘリコプターに切り替えており態々撤去して後部離着陸甲板と格納庫を作った程度、水偵搭載設備は別の支援艦で使用された。短期間で対独逸戦に実戦投入も出来る事から二番艦は亡命仏蘭西政府“自由仏蘭西”が使用する事になり日本政府も了承したのである。何よりも乗務員向けの取扱説明書は米国流に習い戦艦を擬人化して漫画にした。因みにこの漫画を描いた人物こそ戦後日本漫画やアニメーションに多大な影響を与えた手塚修で当時は海軍予備医療士官として大阪海軍本部に所属していた。単に漫画が上手い人物を軍内で探していて彼を筆頭に極秘計画扱いで進められていたと言う。最も彼は晩年“資料として渡されたアメリカ軍のマニュアルを真似した程度に過ぎない”と米国三大ネットワークの合同取材のインタビューで明かすのは別の話である。
葵川やアイゼンハワーにとってこの事は喜ばしい事である様に見えるのだが懸念があった。
「抗日派がクーデターを起しかねません」
アイゼンハワードは飛鳥を表敬訪問し、司令官室にてバッサリと懸念を示した。
「しかし太平洋艦隊は大の講和賛成派と窺ってますが」
「キーガン提督は確かにそうですが他の艦隊司令官は揃って抗日派、南部出身者です」
南部出身者は南北戦争時に奴隷を使う事に躊躇しなかった米国人であり、白人至上主義者が多い……故に三軍内で黒人や亜細亜系移民が迫害する事も珍しくなく米軍の問題でもあった。
「心理学を学ばれたと窺ってますが、葵川司令官はこの問題をどう見てますか?」
「私達の場合は白人に対して劣っている意識、亜細亜人に対して優位に立っている意識があるのです」
「なるほど、確かに祖先が同じ欧州各国には我々は劣っている意識を持つ事が多いです」
「意識改革をするには難しい事は分かってますが、ご自身が示す事で解決するかもしれません」

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