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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 129

ショーンは設立されて間もない空軍ですら採用されなかった……本人は理由は分かっていた、自分はイタリア移民三世であり、祖父の弟がファシスト主義に傾倒している。祖父はテキサスの片田舎で農家をして弟の事は当局からの知らせで初めて知った……いっそ事満州国に移住も考えるも海兵隊の人員募集がありダメ元で応募すると即採用された。シオンとは海兵隊養成所で知り合い同じく移民と言う事で意気投合した。
「うぉっ!」
「結構衝撃があるな」
LCVPが下ろされ波飛沫が上がり、LCVPを操船する士官は巧みに舵とスロットルを操作し上陸地点へと目指す。周囲は煙が立ち込めているがこれは上陸艇支援艇による煙幕だ……LCVPを操船する士官には先導する支援艇と航空機により発光モールスで進路や速度を変更する。
上陸支援艇とはその名の通り幾多の上陸艇を同時に運用する際に使用する小型艇で上陸地点の強行偵察にも使用される数人乗りの舟艇だ。元は水上特攻艇“震洋”として計画されるも戦況が悪化せずに安定した事で使い道が大型艦搭載や軍港の雑用艇になっているが蒼龍では上陸艇を同時多数で誘導する際の先導艇として活用している。米海兵隊はこの様な舟艇は無い。
「凄いな本格的だな」
上陸艇を阻む様にして太い丸太が数本組まれた防護装置を見て驚く……元々はこの島は米軍の侵攻を見越して海岸線防護装置の試験施設の一つであり海軍陸戦隊の演習地でもある。実弾こそ飛んでは来ないが防護陣地からはペイント弾が飛んでくる。
「頭低く!実戦と思え!」
指揮官が荒々しく言う。
その証拠にLCVPの船体に赤いペイントが刻まれる……あちらの腕前も米国陸軍とは遜色はない、シオンはそう感じた。太平洋諸島群の奪還作戦が動いていれば双方のみならず現地住民まで被害が及んでいた。
「(こりゃあ味方でよかったな)」
シオンはアサルトライフルを構えて膝まで海水に浸かりつつも進む……アサルトライフルは米三軍に先駆けて海兵隊が導入するも大西洋戦線の海兵隊に優先配備されていたが今回はマダラスカル上陸作戦とあって太平洋戦線の海兵隊に初めて導入された。確かにこれまでのライフルとは異なり使い勝手が良いのはシオンもよく分かる。
ライフルでは連射が出来ないのが多く、連射出来るとしても五発までだ。WWTの戦訓からサブマシンガンが開発されるも命中精度と射程距離が及ばない。ライフル並に命中/射程距離が良く尚且つSMGの様に連射出来る……それがアサルトライフルだ。極東エレサイム共和国の高い技術力と高い工業力がある米国が開発した新機軸の銃でもある。銃床にプラスチックを使うのはアフリカの気候を配慮した結果だが海水に浸かる割合が高い海兵隊にとってはメンテナンスが楽になる。
「クリアっ!」
味方が敵陣地を制圧したそうだ……だが上陸艇止めを配したこの陣地は厄介とも言える。戦車が揚陸出来ないからだ。海兵隊に戦車が導入されるまで遅かったがシャーマン戦車は高い量産性と整備性を持つ事が幸いであった。だが日本海軍陸戦隊は戦車すら持ってない、保有しているのは大型バイクのみだ。
日本が戦車開発に遅れた理由としては周辺国が“植民地”であり、軽戦車でも十分な威力を発揮する事が出来た事もあるが何よりも自動車の使用が都市部に集中し主要国道の未舗装が多い、鉄道路線建設に押されている。しかしここ数年は日本に多数の欧州人が住む様になり否が応でも主要国道の舗装と高速道路建設気運が高まっていた。鉄道も優れているが使用するには線路を敷設しないといけない……更に峠になると傾斜角度が高いと最悪スイッチバックやループ、トンネルを掘る必要もある、それに対応した蒸気機関車の開発も必要になる。敷設後もメンテナンスに多大な時間と金がかかる事から自動車の活用を広げる為にも道路舗装が必須になったのである。確かに自動車の貨物輸送はコスト面では鉄道よりは優れている。これは国防にも繋がる……鉄道一辺倒だった陸軍首脳陣も漸く理解を示したのは亡命したロンメルやフラーの助言もあったと言う。

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