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戦艦空母艦隊
その他リレー小説 - 戦争

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戦艦空母艦隊 128

黒崎まで話が来た時点で海軍トップ&統合参謀部は現場責任者に一任すると言う通達を受け即決したのである。
「さっそく数日後から訓練を始めたいと思います。恥ずかしい話ですが艦内ドックがある強襲揚陸艦は大西洋戦線しかなく……」
黒崎は薄ら笑いをするが大西洋の島嶼はUボートの基地になっている可能性もあり大西洋戦線の海兵隊はこんな時には破壊工作を敢行する訳だ……。
「いえ、私の所は実戦経験が無いので本当に有効なのか……」
二人は何と無くだが分かりあえる気がした。
互いに求めたモノがあるからだ。その夜から黒崎とジェイソンの其々の側近らと交えて打ち合わせをする……ジェイソンはこの為に日本語が堪能な日系人を多数起用しており、陸軍や海軍では司令官の側近起用はまずなかったが彼は敢て起用、中には海軍から移籍した士官もいる。


「艦内からLCVPに乗れるのかぁ」
米国海兵隊らにとっては縄梯子をフル装備でLCVPに乗り移る事は苦労するので蒼龍の様な艦内ドックは正に至れりつくせりだ。
海兵隊の場合は波止場でタラップで降りられるのは稀である……多少の犠牲も“運が無かった”で済まされる訳だが敗戦ムードになっている今はこれでは上官殺しが起きかねない状況である。しかも海兵隊の多くが三軍から溢れてしまった半端者や親や祖父母が移民と言う出身者で占められ、日系人らも多数参加しているので日本海軍との共同作戦を立て易い。
「急げっ!ピクニックに来ているじゃねぇぞっ!」
海兵隊員らは蒼龍の艦内ドックにて大発に乗り込み、実際に演習先の某島に上陸する……数時間前に告げられた時の彼らの表情は悲惨そのものだが余裕が無いのだ。ここ数日中にもナチスドイツ海軍vs日米英連合海軍との一戦が始まる気配が漂っているのである。
亜細亜派遣艦隊に一時的に神鷹(しんよう)と鉄鷹(てつよう)が編入、亡命ドイツ海軍士官と亡命後に志願した民間人、そして二隻が客船時代からの船員らにより運用されておりマダラスカル島解放作戦の為に蒼龍と共に参加する。
「ボッシュ野郎も参加するんですか?」
「……彼らにとっては祖国があんな風ではな……銃を取りたくなるさ」
例の二人は上空を飛ぶ戦闘機を見上げる。機体は日本海軍で使用されるが主翼にはかつてのドイツ国旗がペイントされている。
「ショーン、ボッシュは止めておけ……ドイツをこうさせたのはアメリカにも責任の一端があるんだよ」
「シオン……すまない」
「なに、陸軍も海軍も空軍も蹴られた俺らを受け入れた海兵隊には感謝しているんだよ」
シオンはドイツ系移民四世であり、一度も祖国に赴いた事も無いが米国軍上層部の疑心暗鬼は酷く今でも敵国出身移民を中々前線に出せずにいたが海兵隊はそんな彼らの受け皿となっている。

米国海兵隊のルーツは米国独立戦争まで遡り、タン.タバーンと言う酒場にて募集するポスターを掲示、大陸海兵隊として創設時には10人の将校と約200名の兵卒のみで戦闘に関しては素人に近く、初代総司令官であるサミュラル.ニコラスは居酒屋経営者と言う有り様であった。独立の目途が出来ると解散したが1798年にフランス革命の余波による疑似戦争により今のアメリカ海兵隊が設立されたのである。陸軍、海軍、空軍に次いで第四の軍隊と言える海兵隊は海外派遣専門の軍隊だ。故に海兵隊不要論がこれまで何度か燻る事もあったが今は戦時でしかもアメリカ建国以来の危機とも言える状況であり、移民でも三軍から溢れたアウトローでもウェルカムなのだ。

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