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飛剣跳刀
その他リレー小説 - ファンタジー

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飛剣跳刀 39

 城太郎の鈍重な反応に、ニルウィスは己のその状態を自覚した。
 で、ひとつ息をつくと、決意を固めた様子で話し始めた。
「わたしはもともと、シャリビアの人間よ。それがこんな所にいるのは、あいつらのせい」
「あいつらって?」
「燕雪衣と丁霊龍。師父と師公でもあるわ。…っていうのは、師とその夫に対するミン風の呼び方らしいけど、本当は、そんな呼び方をするのは死んでも嫌。…だって、あいつら、…わたしの父の仇だわ!それに、商隊についていた人間全員の!」
「仇が、師父…だっけ?…師、なのか?」
 ニルウィスは、さっきひっこめたのに、激情のあまりまた涙を浮かべて、
「悪い?でもわたしにそれ以外のどんな道があったっていうの?」
「…うーん、本当に悪いんだけど、俺、頭についてはほめられたことがなくて、要するに…その…バカってよくいわれるんだけど」
「だから、何?」
 話を中断させられて、ニルウィスは苛立った声で叫ぶ。城太郎のほうは心からすまなさそうに、
「えっと、どうしてきみがその、燕…?とか、何とか龍って人を師匠にしないといけなかったのか、わからない」
 ──これまた、ニルウィスが昂奮してすっとばしていたのだが。
「そうね、話してなかったかも」
 ニルウィスは素直に認める。
「そもそも──わたしの父は商人で…それも、かなり大きな──」
〈あの日〉の事を語りだした。といっても、彼女が自分の目で見ていたのは、まだ…燕雪衣が現れて間もない時まで、
「わたしは、その…商隊がやられたのを自分の目では見てなかった!親の死に目にすら会えなかったのよ!しかも、あんな、あんな…」
 嗚咽を飲み込むように息を吸って、激しく続ける。
「目が覚めたら──この先、二、三日もすれば砂漠でも岩砂漠まじりになるでしょ…」
 城太郎には初耳だが、彼は何もいわなかった。
「それで、目が覚めたら…その岩砂漠にあるやつらの寝城にいた。燕雪衣がじっと無表情にこっちを見てて…弟子になれといってきた。その時にはわたし、自分が気を失ってから何が起こったのかすらわからなくて…それをあいつに訊いたら、『みんな、死んだよ』って、それだけ。でもこいつらが殺したってことは決まってるわ!わたしには理解できない!特に燕雪衣…何のためにわたしを弟子にしようなんて思い付いたの…?」
 城太郎が、いかにも重大な謎をつきつけられたみたいに目を丸くする。
「ほんとだ…なんでだろう…?」
「商隊を皆殺しにしておいて、わたしだけ助けて、弟子にしようなんて、いくら考えても意図が知れなかった。でも、その瞬間分かったことはあるわ。…力でも技でも、わたしは燕雪衣にも、ましてや丁霊龍にも敵わない。なら、敵うためにはあいつらと同等になるしかないでしょう?同じ技で、不意をつけば仇は討てる。…父を殺した技で、今度は自分が死ぬがいいわ」
 ニルウィスは笑ったが、妙に背筋を寒くするような笑顔だった。
「それで、…燕雪衣とかいう人を師父に?」
「そうよ」
 ニルウィスが吐き捨てるようにいった。

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