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飛剣跳刀
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飛剣跳刀 30

「ふむ、つまり…放り投げた髑髏が、うまいこと、砂の上にいたこいつにかぶさったか」
「いらん感心をするなっ!」
「感心しても構わんうえ、心配もなさそうだがな」
 飛衛の言葉に、ティンバロはキョトンとした。
「たぶん、それは…飼い蛛踟…らしい。そんな言葉があればな」
「はあ?」
 当然のように、ティンバロはすっとんきょうな声をあげた。
「な、何だよそりゃあ。どこからそんなアホな発想…」
「やかましい」
 飛衛が一喝して、やや憤然としたようにいった。
「ちゃんと、根拠はある!」
 にやりと人の悪そうな笑みを浮かべた。
「知らんのか?野性の砂蜘蛛は、生物に触れた瞬間に毒針を使用する習性があるんだぞ」
 つまり、もしこれが野性ならば、今頃ティンバロは毒を受けているということだ。
「よかったな、ティンバロ」
 ポンっとティンバロの肩を叩くと、飛衛はスタスタと去ってしまう。
「おいっ!?取ってけよ!!」
 ティンバロの叫びを背中に聞き流し、飛衛は目を細める。
 ―――飼い蜘蛛、か。厄介なことになりそうだ。
 浮かべるのは、厄介事を楽しむ笑み。
「せんせ〜、せんせぇ〜!」
 と、遠くから、間のびした、だが音量だけはある声が響いてきた。城太郎が、自分は先にオアシスについたものの、振り返れば飛衛たちがいつまでも立ち止まって話し込んでいるから、また引き返して来たのである。
「しまった、すっかり失念」
 しまったと飛衛がいうのももっとも──このパーティのうち飛衛たちの一組四人を除いては、疲労のあまり、魂も半分抜けかかったようになって、なんの思考もなくただ彼等の後を引きずられるみたいに歩いているのが、半月ばかり前からの実体なのである。
 したがって、飛衛とティンバロがこのひと騒ぎでまったく進んでいない状態になると、呆然とその場で立ち尽くしているのであった。
 …しかも。中には、もう動くのが嫌になったか、そのまま腰を下ろしてしまっている奴、寝転がってしまっている奴までいる。
「どんな冗談だ」
 飛衛の呟きに、
「いいじゃねえか、もう置いて行こうぜ」
 ティンバロがいい放つ。その後で、
「俺はお前も置いて行きてぇんだよ、離れろっ、このっ!」
 頭の踟蛛を払い落とそうとしたが…踟蛛のほうは、どうやらそこが気に入ったようであった。
「踟蛛はどうでも構わんが」
「構うわっ!」
 ティンバロの躍起の顔などまるで無視して、飛衛は続ける。
「厄介といえばこの髑髏」
 話が戻ってきたようである。少なくとも飛衛はそのつもりで、踟蛛のことを今はさて置きと話し出す。
「ほら、こうすると持ち運びに便利な」
 この後に及んで、飛衛は髑髏をまた拾ったまま、手にぶら提げている。…そして、髑髏は、よく見れば角度的に少しおかしかった。
 ティンバロも、さすがに騒ぎ止んで、それに注目した。

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