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マジカルガールロンリーボーイ
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マジカルガールロンリーボーイ 63

「お願い…私は紫電の戦乙女の娘なの!ここで退くわけにはっ…!
パンッ!という乾いた音が聞こえて、頬がジンジンと熱くなった。
それからようやく平手打ちされたと分かった。
「…っ…いっつ!……!!………」
すぐにでも。
すぐにでも平手打ちを仕返して、玩具箱のところへ向かおうと思った。
しかし手が、足が、そして心さえも止まっていた。
綺羅綺羅世界ことワンダフルワールドは。
泣いていたのだ。
涙と鼻水でメイクは落ち、女であれば一番誰にも見られたくない状態の顔を真っ直ぐ私に向け、「男」の顔で私を見て泣いていたのだ。

「貴女は一つ大きい間違いをしてる」
殴った頬を今度は優しく触れた。
「誰も、貴女を紫電の戦乙女の代わりなんて思ってないの。貴女は葉桜雅なの。だから母親の責務を果たそうとするのはやめなさい?確かに母親のようになりたいたいうのは分かる。でもね?貴女は貴女なの。誰でもない、葉桜雅なの。紫電の戦乙女ではなくて葉桜雅なの。そして、確かに貴女の母親はもうこの世にはいない。でも貴女はまだ生きてる。どうか命を投げ出すような真似はしないで。お願いだから…」
先程の泣き顔はそこにはもうなく。
ただひたすら真面目に願いをワンちゃんは言った。
そこにはメイクなんていらない美しい顔があった。
だからこそ。
私も真面目に言おう。
夢の中で知った、私の魔法を取り戻すために。
「私の中にある封印を、解こうと思うの」
ワンちゃんは明らかに驚いた顔をした。
「な、なんで……知ってっ……!?」
「なんでかな?夢の中で見たのよ。お母さんの後を追うのは無理だって、玩具箱にボロボロに言われて、それで私は目標を見失った。魔法使い……ううん。葉桜雅という存在の定義を失った。目の前が真っ黒になって、呼吸も忘れて、生きてるのかどうかも分からなくなった時に、私の奥底の更に底に、本当の私の魔法があることを知ったの」

懐かしい、と思った。
そしてそれは同時に切ない記憶。
私が一番無邪気に魔法を使っていた時の、まだ母が生きていた時の記憶。
もうあの頃には戻れない。
どうしたって、戻れないのだ。
それをいつまでも引きずって、お母さんにこの年まで甘えていた。
今までそうしてきたものを止めるのは、辛いし、怖い。
でも、そのやり方の終着点が私の目標とは違うものなら、止めるしかない。
お母さんの後を追うだけじゃ、私はダブルマイスターになれないのなら……。
「ワンちゃん……私、お母さんの後を追うのはやめるわ」

「雅ちゃん……」
「お母さんの真似事はここまで。ごめんね、今までみっともない姿を見せて。まったく誰か言ってくれたらいいのに。いつまでも母親のことを引きずってるんだって」
「雅ちゃん、それでも私はいいと思ってた。それはそれで、みんなにとっては微笑ましくもあった。戦乙女の娘が母を追う姿は、決して滑稽なんてなかったわ?」
「あはっ……やめてよ……泣けてくる」
「でも雅ちゃん、どうするの?封印魔法は基本的には封印を掛けた術者よりも、魔法能力に長けた者でしか解くことはできないわ?貴女の封印魔法を掛けたのはもちろん貴女のお母さん、紫電の戦乙女。封印なんてどうやって解くの?」

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