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All right
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All right 7

「気付かない茜がわるいんだろ…」
「なんですって!」
「まあまあ、二人とも落ち着いてよ…」
明希のお陰でいま将に始まろうとしていた戦いの火蓋は綺麗に消された。どうやら二人とも明希の言う事は聞くらしい。
三人は並んで歩きながら中庭へと出た。
「明希、あたしが守ってあげるからね!」
茜はやる気まんまんのようだ。
「ありがと」
その好意が嬉しいようで明希はニコっと微笑んだ。
「けど、守るっつっても犯人が誰かも分からないわけで…」
「それを今から話合うの!明希そこのベンチに座って待っててね。悟、ジュース買いに行くよ!」
「わかったよ、いちいち命令口調はやめてくれ」
口喧嘩しながら走ってゆく二人の背中を見ながら明希はクスっと笑った。もしくは気が付いていたのかもしれない、運命の胎動を…

「悟、10円もってない?足らない…」
「あー?ちょっと待って…」
ゴソゴソとポケットを漁っている時に中庭から叫び声がした。
「あぶなーい!」
その喧騒の始まりには悟は走りだしていた。「明希…!」
「ちょっと、悟!」
 遅れて茜も後を追う。運動神経抜群の茜は、すぐに悟るに追いついた。
 中庭につくと、女子生徒が盛大に文句をいっており、見覚えのある瓶底眼鏡の生徒が平謝りしている。そこで彼女が知り合いであると気付く茜。
 彼女が抱えている箱には大量のグラスがあった。見たところ、割れてはいないようだが。
「全く、何処見て歩いてるのよ。割れてたら大損なんだから!」
「さくら、その辺で勘弁してあげなさいよ。わざとやったわけじゃなさそうだし、これだけ謝ってるじゃない」
 声をかける茜に、
「知り合いなのか?」
「知り合いも何も、うちのクラスの春日井さくらだってば。文芸部の企画が忙しいって、クラス企画には殆ど顔出してないけど」
 自分のクラスメイトくらい覚えなさいよ、と悟を小突く茜。
「これ、大事な部費獲得がかかってるんだから……ああ、もういいわ、またぶつからないうちにさっさと行って頂戴」
 さくらが手を振ると、瓶底眼鏡はそそくさと逃げるように去っていった。

「そういえば、文芸部の企画は喫茶店だったわね」
 廊下を歩きながら話すさくらと茜。悟は明希が心配だと、ジュースを持って戻っていった。
「そう、漫画喫茶ならぬNovel Cafe。コーヒーでも飲みながら、ゆっくり読書していってもらおうって企画。部員の書いた小説の発表も兼ねてるの」
「Novel Cafeかぁ、お洒落な響きね。さくらの書いたのもあるんでしょう?」
「もちろん。『青の勧め?』っていうラブコメなんだけど、結構自信作なのよ。でも、今回の目玉は別。部員全員で書いたリレー小説があるの」
「リレー小説? それ、随分時間かかってるんじゃない?」
「まあね。何度も綿密な打ち合わせをして、少しずつ書き進められるようにホームページを利用したの」
「へぇ、最近は文芸部も機械化が進んでるわね」
「私は難しい事は分らないから、リレーの本文だけに沿って更新してたんだけど、後から後輩に怒られちゃってね。『設定をちゃんと読んで下さい』って。
 で、トップページをよくよく見てみたら『リレー小説総合』っていうのがいつの間にか出来ててね。そこを覗いたら、今まで動かしてたキャラの設定がちゃんと書いてあったのよ。いやぁ、焦った焦った」
 苦笑しつつ頭を掻くさくら。
「そういえば、さくらの能力って機械とは相性悪かったのよね」
「うん、『ゴーストライト』は紙にしか書けないから、どうも勝手が違うのよ」
「機械化が進んでるからねー」
「そうなのよ、機械化の進む昨今わたしの異能が淘汰されようとしている、かなしいかな…」

「明希、顔色悪いぞ大丈夫か…?」
「…え?うん、平気だよ。」
「それならいいんだけど…」
悟と明希は中庭から場所を変え、第一校舎の屋上にいた。
脅迫状を受け取った日から目に見えてやつれていく明希を少しでも元気付けようという悟なりの優しさだった。「…あんま気にするなよ、ただの悪戯だって。それにお前が大人しいとおれまで調子狂うからさ」
悟は出来るだけ笑顔を浮かべて言った。

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