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All right
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All right 6

茜、しばし考え込んだ後、椅子がひっくり返るくらいの勢いで立ち上がる。
「行くわよ!」
「どこに?」
悟の問いに、自信たっぷり胸を張って答える茜。
「捜査の基本は『足』よ…第一、異能に頼ろうとする姿勢が浅はかなのよ…あぁコレだから素人は…!」
あからさまに悟を見下す…。
「…お前昨日と言ってる事が…」
悟の反論を無視しつつ教室を出て行く茜。
「う〜ん、現場の捜索…後は聞き込みと証拠品…」
楽しそうだな、おい。

「ああもうっ! 何でまともな情報がひとっつも無いわけ!? みんな危機管理意識が低いのよ!」
「声がでかいって。他の生徒がびびってる」
 隣を行く茜の叫びに、悟は五月蝿そうに眉を寄せた。
 思い立ったままに即刻聞き込みを開始した二人だったが、有力そうな情報は得られずにいた。
「それに仕方ないさ。あからさまに挙動不審じゃないかぎりはいちいちロッカーに近づいたやつを憶えてるわけないだろ?」
 天陽学園は、式典以外には制服着用の義務はない。そのため、普通に振る舞えばそう目立ちはしないのだ。
 早い話が、大学や中等部の生徒が紛れることもあるため、知らない人物の行動を不審に思う生徒の割合は少ないということだ。
 つまり、脅迫状を入れるところを知人に見られてでもいないかぎり話は出ないし、コピーなどの周到さから考えればそんな愚を犯すとは考えられず、聞き込みはあまり有効な手段ではなかった。
「犯人はどの学年かも分かんないのに、怪しいやつ見なかったかっていっても、なぁ」
「うっさいわね。もう分かったわよ」
踵を返し、教室に戻ろうとする茜の足に、小走りに駆けてきた瓶底眼鏡の男子生徒が蹴つまづく…プリントやらファイルやら派手にぶちまけながら転倒。
「あうぅ…すみません…」
「大丈夫?」
助け起こそうとした茜だったが…ぼさぼさの長髪にフケで雪化粧された黒コートには流石に引いた。とりあえず、プリント類の回収…文化祭関連のプリントに紛れて、明らかに他とは違う『封筒』を確認した。かき集めた書類と共に手渡すが、その封筒だけは大事そうに懐にしまう瓶底眼鏡。謝罪を繰り返しながら、そそくさと去る。
「悟、いまの子知ってる?」
「何度か校内で見かけた事はあるけど…あいつがどうかした?」
「…うぅん、なんでもない。」
だが言葉とは裏腹に茜の表情はきびしかった。
「…なぁ茜、おれ思うんだけど犯人探すより明希の近くにいてやる方が良くないか?」


廊下に明希を見付けるのはあまり苦労はしなかった。
「…ったく、もっと早く言いなさいよ」
茜が吐き出すように言う。
遮二無二に犯人を探すよりも明希の近くにいる方が明希を守れるだけでなく、犯人を捕まえられる可能性が高いのは言うまでもない。

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