PiPi's World 投稿小説

All right
恋愛リレー小説 - その他

の最初へ
 3
 5
の最後へ

All right 5

墨田の存在は知っていたが話すのはこれが初めてだ。
「何の用だい?」
目の前に表れた青年は明らかに不機嫌だった。
「あぁ、えーっと頼みたい事があるんだけども…」
相手がこんなに不機嫌な顔をしていたら悟としても話す事も話せなくなる。
「依頼かい?残念だけど僕は女の子の依頼しか受けないんだ。じゃあ、これで失礼するよ。」
言い終わるなり踵を返して歩いて行ってしまった。
「あ!ちょ、ちょっと待ってくれよ!」
悟もこれには驚く。
「なんだよ、茜の奴話が違うじゃねーか」
…ピク、
墨田の歩みが止まる。スタスタスタ!
墨田は猛烈な勢いで悟の前に戻ってきた。
「うわっ!」
またしても驚きの声を上げる悟。
「茜って、大城茜さんの事かい!?」
「そうだけど…」
それを聞くなり、
「なーんだ、そういう事は早く言いたまえ!茜さんの依頼なら喜んで受けようではないか!」
と、さっきの不機嫌顔が不思議なくらいに上機嫌になった。
あっけにとられた悟は口を開けたまま固まってしまっていた。

「なるほどね。脅迫状とは古風な。」
落ち着きを取り戻した悟は事のなりゆきを墨田に話し、あの脅迫状まがいのものを見せていた。
「どう思う?」
紙を真剣に見つめる墨田。
「茜さんの頼みなら仕方ない、少し調べてみるか。」
「調べるってどうやってだ?」
「なんだ、キミは僕の『異能』を知らないで依頼したのかい?僕の『異能』は『慧眼』。物質から情報を読み取る能力だ。」
『慧眼』は物質に残されている残留思念を読み取る能力のこと。
残留思念とはその物質に染み付いた人間の思考、もしくは記憶である。悟に「情報を読み取る」と言ったのは、おそらく理解できないだろう、という墨田の親切心(?)であると思われる。
「まあ、あまり期待はするなよ。一日も間があるなら記憶の方はもう残りかすほどもないだろうし、精神の方も脅迫状を送るような輩のものなど理解できない確立が高い」
「……つまりどういう事だ?」
 悟の疑問符に墨田は嘲笑を向け、
「ふん、浅はかだね。たとえば悲しみ。言葉で説明されたからって自分のそれが悲しみだと気付ける人は何人いる? 何かを感じたところで僕が持ったことのない感情はさすがに説明できないし、僕がそれを悲しみだと認識しなければ、それは無だ。無理矢理に近い表現も探せるが、それでは無意味だろ」
「む…」
 今一墨田の話が理解できていない悟だが、聞き返すのも癪だ。
「まぁいい。キミは僕の鑑定結果を茜さんに届けるメッセンジャーだしな」
 墨田は目を閉じ、両手に嵌めた指輪の先の宝石を脅迫状に向ける。これが彼の触媒なのだろう。
 すると、脅迫状が虹色に輝き出した。暫し後に色の乱舞が止むと、墨田は目を開ける。
「ど、どうだった?」
 尋ねる悟に、墨田は首を振る。
「やはり大した思念は残っていなかった。辛うじて分かるのは、製作者はかなりの集中力の持ち主であるという事くらいだ。
 コピーを送ってきた辺り、僕へ依頼が持ち込まれる事を想定していたのかもしれないな。コピーは機械の動作だから、殆ど思念が消えてしまうんだ」
「そうか……ありがとう」
「男の礼などいらん。茜さんに宜しく伝えてくれたまえ」
 悟が背を向けた時、宗一の顔には薄い笑みが浮かんでいた。

「……だ、そうだ」
 教室へ戻って茜に報告すると、茜はぷっ、と吹き出した。
「あのね、墨田君の能力は『偏光』、光を操る能力。彼、心理学が得意だから、その鑑定をお願いしたの」
「じゃ、あの時紙が光ってたのは…」
「パフォーマンス。彼、派手なの好きだから」

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す