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All right
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All right 30

「あ、あの、よかったら部の出し物とか紹介しましょうか?」
「ああ、そうしてもらえると助かる」
「あ、はい。たくさんあるんでいくつか選んで紹介します。まずは科学部です」
 流馬はコピー紙の束を取り出し、それに目を落とした。実行委員か何かの資料なのだろう。
「えっと、今年の科学部は炎色反応の公開実験だそうです」
「……ぱっとしないな」
「そ、そうですか? ちなみにしおりに載せる紹介文は『爆発は芸術だ。色とりどりの炎で祭へ彩りを。爆破予定教室はその時まで秘密なので心して待たれよ』だそうですよ」
「……は?」
 とてもおかしな単語が聞こえた気がして、思わず間抜けな声が出た。しかし流馬どころか明希まで気にした様子もなく、
「次は料理部です。『今年は何より色にこだわりました。極彩色のフルコースを召し上がれ。特別メニューは蛍光色セットです』。どうやら今年はまともなんですね」
「え? お、おい、去年は何だったんだよ!? 明希も何で普通に――っ」
 嫌な想像で背筋に寒いものを感じながらの質問は、しかし流された。
「オカルト研究部は、うわっ、……いえ、何でもないです。え、ええ本当に」
「……っ!」
「オカ研はいつもアレだもんね。今年はまだ良い方じゃないかな。」
さらりとそんなことを言ってのける明希。
「だからアレってなんだよ!?」
「そそそれよりですね、そろそろ元の場所に帰った方がいいんじゃないでしょうか…?」
またもや流された質問に、俺は答えを二人から引き出すことを諦めた。

流馬は右手でボリボリと髪を掻きながら俺と明希の顔を窺う。どうやらこの癖、流馬が困った時に出るようだった。
明希はチラリと俺の方に目をやると、流馬の提案に頷く。
「悟も…戻ろ?」
そう言って差し出された明希の右手をしばらくの間見つめると、俺はその手を握りしめた。
「…戻ろっか。」
明希と手を繋いだのなんて小学生の遠足以来、か?
記憶の中よりも小さくて柔らかいその手に、なんだか照れ臭くて明希の顔がまともに見れなかった。


「ゴホッ」
─あ、
わざとらしい咳に後ろを振り返ると、流馬が目のやり場に困ったように立っていて。
─コイツがいたこと忘れてた…
手、離した方がいいよな。
もう少し繋いだままでいたかった気もするけど。

 さてどうしようと隣の明希へと顔を向ければ、そこにあったのは同じように困ったような笑みだった。
 同時に、握られていた手からためらいがちに力が抜けた。
 それだけで明希の言いたいことはちゃんと解って、だから、と名残おしさを振り切って手を離した。
 小さな手の感触が消えた後にはわずかな温もりだけが残り、それすらもすぐに夜の空気に溶けていく。
 それを逃がさないようにと、強く、強く手を握り締める。
 明希も胸の前で手を組むように、つないでいた手をもう片方の手で包み込むようにしていた。

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