PiPi's World 投稿小説

All right
恋愛リレー小説 - その他

の最初へ
 29
 31
の最後へ

All right 31

そんなしぐさから、明希もまた自分と同じ気持ちでいてくれるように思えて、また胸が熱くなった。


「あっ!」
今度はすっとんきょうな声を上げる流馬に、自分の気持ちがバレてしまったのかと慌てる悟。
一方、いたって冷静な明希は流馬に怪訝な目を向ける。
─と、二人の視線が何かに捕われたかのように動かなくなった。
悟もつられてそちらの方に目をやると、人気のまるでなかった特別教室棟に明かりがともったのが分かる。
ただそれだけのことのはずなのに二人の表情は固いまま崩れない。
「二人とも…」
どうかしたのか?と続けようとしたところで、流馬に手で制される。
「見た…わよね?」
明希は小声で、俺ではなく流馬にそう尋ねる。
「はい。」
こちらも声のトーンは先ほどとは違い格段に低い。
「顔は?」
その問いに、黙ったまま首だけ動かし肯定を示す流馬。
何事かを思案している明希の様子に、嫌な予感は増すばかりだった。
「どうしたんだよ?」
今度は声を潜めてそう尋ねる。
明希は少し躊躇ってからつい先ほど目にした光景を俺に話してくれた。
「…さっき、男があそこの教室に入って行ったのが見えたんだけど」
 と言って明希は俺たちのいる特別棟の、中庭を挟んで向かい側にある先ほど電気が灯った教室を指差す。
「そそそれででですね、その男の様子が、」
「「怪しかった」」「のよ!」「んです!」
 2人の声がシンクロして、人気のない廊下に響く。
「分かったから落ち着いてくれよ。」
 さっき注意したのは誰だったんだか…。と悟の呆れた感情が伝わったのだろうか。
 少しシュンとした様子の明希と流馬。明希は可愛いとしても流馬のそれはどうなんだろう?
…とまぁ、そんな突っ込みは置いといて。
「、で顔がどうとか言ってたけど。誰だか分ったのか?」
「あたしは見たの一瞬だけだったから…」
 流馬の方に助けを求める視線を送る明希。それを受けて今度は流馬が口を開いた。
「さ、さっきの人影は、墨田氏だったと思うのです。」
「スミダって、あの墨田宗一?」
「…私にもそう見えたの。」
「……マジかよ。」
「ぼぼ僕の眼鏡はですね、夜でも視力が落ちない特注品なので間違いないです。」
 落ちないって言っても…お前の視力はいくつあるんだよ?!
 悟が心に湧き出た疑問を流馬にぶつけようと息巻いていたら、明希に先を越された。
「ね、行ってみない?」
 月明かりの中で、明希の瞳が煌いたのが分かる。
「…どこへ?」
 考えていることは分かっていたが、悟は一応そう聞いてみる。
「虎穴に入らずんば…って言うじゃない?」
 真っ直ぐに、怪しい男が入ったとされる教室を見据えながらそう答える明希。
 

 

SNSでこの小説を紹介

その他の他のリレー小説

こちらから小説を探す