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All right
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All right 15


「……」
「……」
 茜とさくらが見えなくなり二人っきりになった途端、お互いに妙に萎縮してしまい、奇妙な沈黙が場にただよい始めた。
 まだ事件が続くこと知らされた今、明希のショックは計り知れないだろう。それぐらいは悟にも分かる。
 だが悟には気の利いたはげましなど何ひとつ思い浮かばず、うかつな事も言えないのでただただ黙っているしかなかった。
 嫌な沈黙の中、悟はこんなことになるなら本でも読んで、格好いい科白のひとつやふたつ覚えておけばよかったと現実から目を逸らしはじめる。
 そして先に沈黙を破ったのは、
「……ねぇ悟」
「ん、え、ああ、どうかしたか明希?」
「あのね、これ聞いたら悟、多分怒ると思うけんだど、……やっぱりここは、大人の人たちに任せたほうが良いと思うんだ」
「……」
 明希の言うとおりに、悟は確かに怒りに近いものを感じた。だが明希は続けて、
「だって、私がちょっとがまんするだけで、みんなが危ない目にあわなくても済むんだよ? 茜ちゃんもさくらちゃんも、……悟も。だったら考えるまでもないでしょ?」
 その言葉は、悟の中にあった、怒りにも似た気持ちを一気に冷却した。
 自分が一番辛いはずなのに、それでも目の前の少女は他人のことを優先した。痛みを知り、怖さを知っているというのに。だからこそ、それを知っているからこそ、自らがすべてを抱え込むことを選択した。
 他人の痛みを共感するぐらいならひとりで耐える。わずかな他人のメリットのために、自分を捨てる。詰まるところ、ただそれだけの物語。
 現実は非情に悲愴。不幸から卑怯に逃げ回るのが力の無い者の利口なやり方。
 それは分かっているのだが。
「……やっぱり駄目だ」
「何でっ!? だって、だって、私のせいでみんな――」
「違う」
 強く、はっきりと。明希のために言葉をさえぎる。
「これは明希のせいじゃないし、それにひとつ大事なことを忘れてる」
「……え?」
「だってそれってさ、俺たちに保身のために友達……明希を見捨てる決断をしろっ、てことじゃないか。他人が傷つくぐらいなら自分が。そう思うのは明希だけじゃないんだ。明希を犠牲にして手にした安全を喜ぶなんて、少なくとも俺にはできないよ」
 優しすぎて素直すぎて、だから残酷なその考え方。
それは犠牲となる『誰か』が『悟』に当て嵌まるだけの事実。予告状にあった『偽善』という単語が脳裏をよぎる。助けられる側のやるせなさなどおかまいなしに、助けたい?怪盗なにがしの思う壺ではないか?
しかし何故だろう…明希はその矛盾に満ちた思いやりに対する苦痛さえ、自然と受け入れる覚悟があった。
「負けられないよね…?」
悟がいる…ただそれだけでこの苦境さえ、冒険活劇のヒロインの様な高揚を感じられた…。

その頃、茜とさくらは…?
「ファッ〇ン!キモ流!」
荒れまくるさくら。
「ああぁーっ!?」
渡り廊下にさしかかった辺りで絶叫と共に窓を全開、身を乗り出すさくら。
「流サマぁ…はにゃ〜ん…。」
「さくら?危ない!落ちる!落ちるぅっ?」
飛び下り××スタイルのさくらを支える茜。ハートマークの視線の先には…逆立った金髪、真紅のコート…その手の中には銘銃ルガーP08…さくら曰く、伝説の英雄…。

「ルガーの流!」
「はぁ、なんでしょうか(ぼけ〜)?」
彼を取り囲む不良生徒が五人…。
「ここで会ったが…。」
「あ、廃部寸前の総合格闘同好会の皆さん!」

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