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All right 14

 覗いた中に見えるのは、紙が一枚だけ。
 否が応でも前回の脅迫状が頭裏に浮かぶ。
「……明希、読むよ?」
「う、うん」
 明希は少し青ざめた顔で首肯する。
 その表情になぐさめの言葉がいくつも浮かんだが、この手紙が犯人からだと決まった訳ではない。早計だな、と自分を戒める。
 ……まるで保護者ね。
 それに、これは自分の仕事じゃないとも思う。もっと適した人物がいるのだから。自分よりも、誰よりも。 
 だから、今はこの手紙だ。
 茜は取り出した手紙の文面に視線を走らせる。

『突然の手紙で驚かせてしまったら申し訳ない。
貴女が何者かに狙われている事を小耳に挟んだので。
もし力が必要であるなら僕は協力を惜しまない』

 几帳面にタイプされた短い文章。文末にはメールアドレスと共に自筆の署名があった。

『ルガーの流』

「これって、さくらの言ってた……」
 震える手で手紙を明希に渡す茜。
「どれどれ?」
「あたしにも見せてよ」
 肩越しに覗き込む悟とさくら。
「もし、これがマジだとすると……」
 茜とさくらが同時に叫ぶ。
『キモ流は「ルガーの流」のパシリ?!』
状況を把握してない明希に、事の顛末を話す悟。
「茜…さくら…タイミングからしてどう考えても坂本くんがルガーの…。」
おずおず、もっともな指摘をしようとする明希だったが…。
「坂本くんには悪い事しちゃったわね…?いいえ!彼の濡れ衣を晴らす為、何としても真犯人を…!」
濡れ衣着せた張本人が何を言う。
「あぁっ流サマ!迫り来る魔の手から『私を』守ろうと、命をかけて…!」
…問題外…。
「明希…こいつら聞いちゃいねぇ…。」
悟はもうひとつの封筒…おそらく流が第一発見者…を拾いあげる。
 持ったときの重さや厚さから、中身はおそらく紙が一、二枚だと見当を付ける。
「っと、じゃあこっちはやっぱ――」
「……」
 明希は無言だ。やはり怖いのだろう。
「……なぁに暗い顔してんだよ。案外、こっちも坂本からの手紙かもしれないだろ?」
「う、うん。そだね」
「じゃあ、開けるぞ」
 わずかに開いた箇所から見える中身は、やはり手紙だ。となるとやはり脅迫状か。
 しかし気にしていても進まない。悟は一気に残りの封を開け、中の紙を取り出した。
おなじみ新聞の切り貼りコピーで、文面は比較的簡潔なメッセージ。
…まさに茶番…偽善に満ちた助力がどれ程の物か…精々あがくがいい。

怪盗X

「偽善かよ…言ってくれるじゃないか…?」
悟も茜も、破り捨ててやりたいとも思ったが、一応数少ない証拠品だ。明希は青ざめた顔を両手で覆い目を背ける。
「悟…私とさくらはその…坂本くんに謝って来る!」
「はにゃ〜ん…流サマぁ…」
別世界を彷徨うさくらを引き摺って行く茜。
「悟は明希についててやって…!」
…しっかりしろよ『王子様』…。

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