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All right 12

「……」
 悟はそんな明希を黙って見つめていたが、やがて視線を逸らし、
「ていっ」
 そんな気合の抜けた声とともに、うつむく後頭部に軽いチョップを入れた。思わず頭に手をやりながら顔を上げた明希に、悟はそっぽを向いたまま、
「迷惑だったりしたら、こんなこと自発的になんてやらないっつうの。それが分かったらもうそんなこと口にすんな。……調子が狂うから」
「……うん。ゴメ――あ。ううん、ありがとう悟」
「う、うん、まあ……。そ、それより、秋島は何か考えつかないか? 例えば、容疑者とまでは行かなくとも本人を絞り込めそうな条件とかさ」
 対し夏美は眉を少し寄せ、
「まだ何とも、な。強いて言えば授業中に色々なところにいても怪しまれない奴としか……」
「だよなぁ……この時期を計算してこんな行動に出たとしたら、相当な知能犯ってことか?」
「いや、そう考えるのは早計かもしれない。犯人がそれなりに計画を練っている事と、最終的に明希を狙っている事は疑いないだろう。
 ただ、いきなり明希を狙わずに京を狙ったのには別の意図があるかもしれない、とは考えられないか?」
「別の、意図?」
 ああ、と頷いて夏美は続ける。
「口では大きな事を言っているが、犯人は自分にそれほど自信のない奴なのかもしれない」
「だからいきなり明希を狙わずに京を、か……つまり、予行練習のようなものかもしれないんだな」
「そう。そして、脅迫状に書いてある『証拠』とやらが犯人の練習代わりの犯行だとすると、最低であとひとり、明希の身近な生徒が狙われるはずだ」
「……俺たちか。さくらたちにもその事、言っとかないとだな。特に茜は――」
 と、悟がつぶやくと同時、
「ちょっと失礼するわよ」
「うおっ!?」
 噂をすれば何とやら、タイミングよく茜が現れた。ドアの開いた音はしなかったから、また異能でも使ったのだろう。
「っておい、さくらはひとりか!?」
「なに慌ててんの? さくらなら部活の方に行ったわ」
「……ひとりじゃないのか。なら一応は安心だな」
「ちょっと、なにひとりで慌てたり納得したりしてんの? あたしは今来たばっかりなんだから、ちゃんと説明してよねっ」
「あ、ああ。わかってるって」
 悟は眉を立てて詰め寄る茜に若干引き気味になりながら、しばらくは明希よりも自分達のほうが危険であることを説明した。
「――なるほどね。だからあんなに慌ててたの?」
「当たり前だ。犯人がどんなやつかも分からないのに、女の子のひとり歩きは危なすぎるだろ?」
「うわぁ、やっさしーのね悟。ちょっと意外。――あ、もしかして……。ふむふむ、そういうことねー」
 ひとりで何かつぶやくと、納得したように何度も首肯する茜。
「……何ニヤついてんだよ」
「ふふ、ちょっとね。あんたがさくらに惚れちゃったんじゃないかなー、って。だからそんなに心配してるんでしょ?」
「えっ!?」
 何故か明希が小さく声を上げておどろく。だが悟はそのことに気付かず眉を寄せ、
「……馬鹿言え。そんな訳ないだろ」
「おやおや? そのつれない態度は若さゆえの照れ隠しかなぁ?」
「……怒るぞ?」
 こいつは何が言いたいのか。
 悟が少し本気でにらむと、茜はため息ひとつ。
「あーあ、ノリ悪いやつ。そんなんじゃ一生彼女できないわよ?」
「余計なお世話だっ」
「あ、そういうこと言うんだ。……明希もノリ悪いやつは嫌よね?」

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