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パニックスクール
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パニックスクール 65


由紀と絵美も、家庭科室前へと忍び寄る。
何も言わずに、板壁に耳を当てて中の声を探ろうとしていた。
(なんのつもりかしらね。)
(ここって・・・・女子ばっかりよね。)

「さあ、材料もそろったから始めるよ。賞味期限迫ってるから今日と明日で使い切るわよ。」
という川部 由里の声とともに、料理部員達は動き出した。

みんな基本的に料理好きだからだろう。
和気藹々としつつも手早く調理が進む。

鰤のてり焼きとか、サーモンのホイル焼きなど、弁当という性質上加熱処理の無いメニューが選ばれていた。
「ここの火加減が大事なの。」
「このまま何分焼けばいいんだ?」
女の子たちが実際に作るのを見ながら洋平はあれこれと質問をしてはメモを取っていた。
その光景を見ながら由里は思った。
(男の人がいると雰囲気が違うわね。なんだかいつもより楽しい。)

さて、室外・・・・・。
絵美と由紀は中の会話をこっそりと聞いていた。
「話の内容は普通に魚料理の話みたいよ。」
と絵美が言うと、
「にしてもずいぶん楽しそうに教えてるようだな。」
と由紀は言った。
危機感を強める二人であった。


「あっ。焼けたみたいよ。」
グリルから引き出された焼き魚を女の子たちが皿に盛っている。
「旨そうだな。」
「旨そうなんじゃなくて旨いのよ。」
女の子の1人が笑顔で言った。

丁寧に骨を取り除きながら、皆でおいしそうに食べている。
「おお、うめえじゃん。」
「でしょー。」

程なくして食べ終わると、今度は洋平が自分で作ってみることになった。
「この骨はこう取って・・・・」
「結構上手ね。」
「売り物にするために捌いたりはするからな。」
女の子達に感心されながら、洋平は手を進めていた。

「煮る時は出汁が大事なのよ。」
骨取りなどの魚の準備と平行して出汁の用意をしていたら、由里が洋平の横にやってきた。
「もう少し強火にして・・・」
「そうか。強くしたぞ。」
「そのぐらいね。あとはしばらく煮続けて。」

「なんだか部長と魚崎君っていいカンジじゃない?」
「せっかくだから男ゲットしちゃえ?」
料理部員たちも小声で噂を始めている。

そしてその雰囲気は外にいた絵美と由紀にも伝わった。
「妙に雰囲気よさそうね。」
絵美の表情が少し暗くなった。
「声が聞こえにくいな。うう、気になるー。」
由紀は由紀で焦っているようだ。
「ははっ、俺じゃ川部さんとは釣り合わないよ。それに……」
ふと洋平の脳裏に浮かんだのは由紀と絵美の顔。
「今、気になっている奴居るしな」
「えー、誰々?」
興味心身に聞いてくる後輩の女子部員。
「そりゃ秘密だ。まあ、俺より川部さんの方が引く手数多だろうに。それだけ料理が上手かったら」
「そんな事無いわよ。それに私の取り得はこれだけしかないし」
「それを言っちゃあ俺も柔道ぐらいしかないし、料理し始めたのも小遣いじゃ追っつかなくて切羽詰って始めたもんだぜ」
あのクソ親父めと愚痴る洋平。
「あっ、魚崎君!!沸騰してる!!」
「げっ!!やべぇ!!」
話に夢中になっていて気を逸らしていたのが原因で出汁が入った鍋が沸騰して慌てて洋平はコンロを消した。


「今日は助かったよ。おかげでなんとか自分で作れそうだよ」
部活動を終え、川部に礼を言う洋平。
「ううん。これくらいなら別に構わないわ。こっちこそ、食材の提供ありがとね」

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