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パニックスクール
恋愛リレー小説 - ラブコメ

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パニックスクール 66

「流石に売れ残りとは言え、廃棄するのも勿体無いと思っていたからな。そんな事ぐらいならいつでも言ってくれ」
御安い御用とばかりにはにかむ洋平。
「ん?あそこに居るのは……おーい!!由紀、斉藤!!」
正門を出ようとしている二人を発見し、洋平が駆け寄る。
「あっ、魚崎君」
「洋平じゃない」
洋平の声に二人は振り返り、喜色満面の声を返す。
「おまえらも帰りか?」
「そうだよ、途中まで一緒に帰ろうよ♪」
「別に構わねぇよ。斉藤もいいだろ?」
「うん♪」
由紀が途中まで一緒に帰る事を誘い、洋平はそれに了承する。
ついでとばかりに絵美も誘い、当然とばかりに頷く。
「それじゃ、私はここで。家の方角が反対ですので」
「ああ、料理の方教えてくれてありがとな」
それぞれ、反対の方向に歩こうとして……
「あっ、そうそう。斉藤さん、山根さん」
踵を返して振り返る川部。二人の名を呼び……
「負けないから。ぼやぼやしていると他の人に取られるわよ。私とかね」
魚崎 洋平争奪戦参戦を宣誓した。
相変わらず洋平は訳が分からずに頭に?を浮かべていた。




「大当たりー!!特賞、リゾートプール無料入場ペアチケット!!」
鬱陶しい梅雨が明け、夏真っ盛り。
空は雲ひとつ無く、容赦なく太陽が火傷しそうなほどに照りつける。
全身からは汗が噴出し、不快指数が現在進行で上昇中。
商店街には残念ながらアーケードといった日差し避け兼雨避けなんて気の効いたものはない。
玄太郎に商品の宅配へ半ば無理やり行かされ、くじ引き券が溜まっていたのを思い出して洋平はやってみたのだが……
いい所でハズレのたわしかポケットティッシュだろうと思っていたが、まさかの特賞とは思っても見なかった。
だが、こうなると当たったチケットの使い道が問題になる。
誰かを誘おうにも一人しか行けないから角が立つだろうし、みんなで行こうにも一人当たりの入場料が1200円オーバーと言う高校生にとっては財布に優しくない料金。
「さて、どうしたもんだろうな」
手に持ったチケットを目の前でひらひらしながら、ジリジリと肌を焦がす太陽から逃げるように洋平は配達用の自転車を漕いだ。




翌日。
休み時間の自席で洋平は渡す相手の居ないチケットをどうしようかと悩んでいた。
「やっほー、洋平♪って、なにそれ?」
由紀が近づいていた事に気づいていなかったのか、自慢の胸を押し付けるように抱きついてくる。
「ああ、見ての通りリゾートプールの無料チケット。商店街のくじ引きで当たった」
だが、洋平はチケットをどうするかで悩んでいて由紀が抱きついている事に気にもしていなかった。
「だったらさ、それで私と一緒に行か……」
「魚崎君」
そのままデートの約束に取り付けそうな勢いの由紀の言葉を遮るように絵美が声をかける。
「おっ、斉藤か。そうだ、斉藤と由紀で一緒に行ってこいよ。女同士だし、ちょうど良いだ……って由紀、首が!!チョーク、チョーク!!」
空気を読まない洋平がどうせ使わないと思って二人で行って来いと進めるが、機嫌が良かった由紀が一転して悪くなり、チョークスリーパーをかける。
「今のは魚崎君が悪いよ」
心なしか絵美も冷たい視線を洋平に向ける。
「ゲホッ、ゴホッ!!俺、何もしてないだろ。結局どうしたもんだろうな、これ」
渡し所を逃したチケットを洋平は再び悩む嵌めになった。


「よう、川端。相変わらずだな、おまえは」
「んっ」
図書室に顔を出すとカウンターで本の虫になっていた里奈が視線をこっちに向ける。
「たまには外に出て運動ぐらいしたらどうだ?と言う事でくじ引きで無料チケット当たったからそれで行って楽しんで来いよ」
里奈の前にチケットを差し出す。チケットと洋平に視線をさ迷わせていたが
「一人だったら詰まらない。だから……」
幼子が甘えるように里奈は洋平の制服の袖を摘んで引っ張る。
「洋平も一緒がいい」
普通の男だったらこれでノックアウトされてもおかしくは無い。
むしろ、即お持ち帰りしたい衝動に駆られるだろう。
「そっか。まあ、チケット自体ペアだし……」
「ちょっと待ったぁーー!!」
一緒に行っても良いかと答えようとした洋平に待ったをかけた。
そこに居たのは七海 麻美。
「図書館では静かに」
せっかくのデートの予定を漕ぎ付けそうだった里奈は不機嫌を露に注意する。
「そのチケットを使ってお姉さまをデートに誘ってあんな事やこんな事をする気でしょ!!この野蛮人!!あんたには勿体無いから私が有効利用してあげる!!そういうわけだから寄越しなさい!!」
「どこのジャイアニズムだ、君は!!というか、欲望駄々漏れだぞ!!」
「お姉さまの貞操はこの私がうば……もとい、護りますわ!!あなたみたいな空気妊娠させるような男にお姉さまを近づかせませんわ!!」
「はぁ、川端。すまんが、この話は後でな」
際限なく広がる被害妄想に洋平は着いていけなくなり、げんなりとして里奈に別れを告げた。



「お嬢様、本当にここなんでしょうか?」
「話に聞けばこの商店街で間違いなさそうですが」
商店街の入り口で高級車が止まり、中から生田 和恵が執事を伴って出てくる。
「しかし、お嬢様。わざわざ、こんな貧乏臭い所に来なくても」
執事は嫌みったらしい言葉をわざと聞こえるように声を出す。
「田村崎、そのような事を言う物ではありません」
「申し訳ございません、お嬢様」
時間帯は夕方。夕食の材料を買いにきた主婦や子供が商店街には溢れている。
和恵と田村崎と呼ばれた執事だけまるで場違いみたいにすら思える。
暫く歩くと魚崎商店の看板が見えてくる。

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