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パニックスクール
恋愛リレー小説 - ラブコメ

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パニックスクール 1

薄暗い夜の空が白み始め、朝刊が配られ始めた時間。営業開始が早い店からは、慌しい音が漏れ始める。
北関東に位置するニュータウンは最近の売込みで人が増え、そこの小さな商店街も再活性化が期待されていた。
陽が上りきれば新学期を向かえ、通学や通勤が始まりを告げる。
学生諸君に取っては長期の休みが終わってがっかり感満載であろう。
さて、この物語は極々普通の商店街に居を構える魚屋さんの息子が繰り広げる極々普通の学生生活であり、極々普通の無自覚やら修羅場やらすれ違いやら勘違いがある……
そんな日常の物語である。




ザシュッという音ともに、血で汚れているバケツにかつおの頭をおとして入れる。
続いて腹に包丁を入れ、ゴム手袋で嵌めた手で腸(ワタ)を抜くと、これまたバケツの中に放り込む。
朝っぱらから、腸やらアラで血塗れのバケツの前に立つ姿は、実にシュールであろう。
生き物を解体して商品にするんだから当たり前の事といえば当たり前なのだが。
今は、そんな物は気にしていられない。というより、この現状に殺意すら沸いている。
今日からまた高校が始まるいうのに、朝五時に、非常識にも部屋の中に入り込んで怒鳴られ叩き起こされれば誰でも不機嫌にもなろう。
「よし、そこに直れ。マジさばくぞ、クソ親父。こっちは今日から学校があるってことわかってんだろうな?」
叩き起こされたこの家の息子、魚崎 洋平の怒りと言うより殺意がしみじみと滲んだ一言だった。
「あー、大丈夫だ。おらぁ気にしねぇから。つうか、今日から新学期だからこそ一家団欒食事が弾むってモンだ。稼ぎ時じゃねぇか」
「ざけんな、コラッ!!コッチはこれから準備しなきゃいけねぇつうのに、新学期早々魚臭くて行けねぇだろうが」
「商売人の息子が何言ってやがる。親の窮状見たら、てめぇから手伝いましょうか? つうのが息子の態度だろうが。当然、サボったら小遣い減額な」
といけしゃあしゃあ脅迫染みた台詞をほざくのはクソ親父こと魚崎 玄太郎。
「きったねぇぞ!!」
「なんとでもいいやがれ、ガッハッハッ!!」
豪快に笑う玄太郎に悔しがる洋平。彼に勝ち目があろうハズもない。小遣いという命綱を握られてはどうしようもない。
新学期早々のこの時期は何かと物入りであると言うのに、さらに削られては飯代のほかにも色々と支障が出ると言うものだ。
とはいうものの、魚の生臭さは実に取れ難い。シャワーを浴びて消臭剤を掛けてと登校の準備に溜息が出る。
とりあえず、発泡に入っているノルマを6時半までに済ませる事が最優先だった。無論、かなり不機嫌になりながらだが。



「やべぇ!!間に合うか!!」
生臭さを取るためシャワー等々と格闘し、制服に着替え、朝ごはんを掻き込むと、学校指定の靴を履くものもどかしく玄関を出て行く。

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