PiPi's World 投稿小説

パニックスクール
恋愛リレー小説 - ラブコメ

の最初へ
 60
 62
の最後へ

パニックスクール 62

「確かに行くには早いが通学中に襲われては元も子もないだろう?だから、車で送っていくよ」
「ええー!!良いですって!!そこまで気遣ってもらわなくても」
両手をぶんぶん振って遠慮しようとする。
「その方がいいかもね。だったら、早く準備して来なさい。柏原さん」
だが、菫も賛成に回ってしまい、結局は乗せてもらっていく事になった。
さて、こうしてストーカー男の企みは未然に塞がれてしまっていた。
無論、車に追いつける訳がなく、綾奈の保育園を経由してだが、深美は無事に学校に送られていったのであった。



それから数日間、朝は大成に車で綾奈と一緒に送迎され、帰りは洋平と絵美が一緒に付き添っている。
家に居ても気を張り詰めなければならなかった日々だったのだが、ぎこちないながらも無邪気な綾奈を介して気が抜けれるようになってきた。
ストーカーは盗聴器も盗撮カメラも仕掛けれる隙が全く無く、ただ無駄な時間が過ぎていくだけだった。



そんなある日曜日の事だった。
菫は外に洗濯物を干しに出ており、大成は家でごろごろとテレビを見ていた。
綾奈はと言うと外に遊びに出て行っている。
子供にとっては近所でも恰好の冒険と興味に惹かれる世界に早代わりする。
近所の子供と一緒に遊んでいて手や靴を泥だらけにしながら綾奈が帰ってきた時の事だ。
家の近所の電柱柱の影から見慣れない太った人がいた。
「おじちゃんなにやってるの?」
興味に引かれた綾奈はストーカーに喋りかけてしまった。
「しっしっ、あっち行けよ。邪魔だ、邪魔」
しかし、そんな幼子の疑問をストーカーは邪険に扱う。
「だから、なにやってるの?」
「邪魔って言ってんだろ、あっち行けよ」
手で追い払うのを諦め、強めに足で払う。
ストーカー本人にしてみれば軽くしたつもりだが、綾奈は転んで尻餅をついてしまう。
綾奈の目に涙が溜まり始め……
「うえーーーーーん!!!」
爆発したように泣き出した。



「ったく、親父の奴。せっかくの休みなんだからゆっくりさせてくれたっていいだろうに」
ぶつぶつと言いながら高丘家への土産である金目鯛を数匹持って洋平は向かっていた。
もうすぐ高丘家だろうという所で綾奈の泣き声が聞こえた。
「あの声、綾奈ちゃんか?どうしたんだ?」
ただ転んだだけとか子供同士のトラブルならいいのだが、まずは状況を見ないとと思って洋平は走った。
洋平の目に飛び込んできたのは危うい光景だった。
綾奈が大泣きしている。しかもすぐ前にはいかがわしい男。
「綾奈ちゃん!おいてめえ、何してんだ!!」
大声で怒鳴りながら洋平が駆け寄る。



同時刻。
遠くから声がする。
「うえーーーーーん!!!」
聞きなれた愛娘の声に続いて。
「綾奈ちゃん!おいてめえ、何してんだ!!」
近所まで来ていたであろう洋平の声も聞こえてきた。
「あの声、綾奈?それに洋平君!!」
家でゆったりとしていた大成はとるものもとりあえずただ事ではないと思って飛び出した。

SNSでこの小説を紹介

ラブコメの他のリレー小説

こちらから小説を探す