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パニックスクール
恋愛リレー小説 - ラブコメ

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パニックスクール 55

急いで机の中の物を仕舞いこんで、かばんを引っつかんで正門に向かう洋平。

「やあ、元気そうでなによりだね。洋平くん」
「びっくりしたよ。なんで来るって言わなかったんだよ。というか、手まで振って、こっちめちゃくちゃ注目されているってば!!」
「はははっ、それだけ驚いてくれたら隠していたかいがあったよ。もっとも言い出したのは菫だけどね」
「あー、そういうあなたもノリノリだったじゃない」

と夫婦揃って笑顔を見せる。
「こうして会った事だし……洋平君、手合わせしないか?あれから、どれくらい腕を伸ばしたか確かめたいんだが」
「いいですよ。まあ、いつも通り俺が負けると思いますけど」

苦笑しながら洋平はあっさりと了承した。と言うのも、大成との柔道の手合わせは洋平にとっても勉強になる。
洋平が柔道の初段に対し、大成は六段……錬士とも呼ばれる段位である。

「それはわからないぞ。最近は俺も仕事、仕事で腕が落ちているかもしれんからな」
気楽に笑いながら大成が答えるが、洋平にとっては大成との実力の差を理解しきっている。

「ともかく、柔道部に聞いて使わせてもらえるように聞いてきますね」
「わかった。その間、俺は菫と綾奈と一緒に校内を見て回るよ」

そう言ってそれぞれ別々の方向へ向かった。




柔道場では同学年同士による練習が行われていた。
その中で汗を拭いていた一年の女子に声を掛ける。
何処の部活もそうだが、男子生徒の比率が少ない為、女子の人数が多い。
その女子はサラリと肩甲骨あたりまで黒い髪を伸ばした娘だった。
背中には「石原」と書かれている。

「すみません。部長はどこですか?」
洋平に声をかけられたその少女はタオルを手にしたまま振り向いた。
「えっ、部長ですか?」
澄んだ声。声とイメージのつりあう、白くて端正な顔を練習の熱でほんのりと紅く染めていた。
「石原・・・さんでいいのかな。ちょっと道場を借りたいんだ。」
やや意外な申し出にその美少女はちょっととまどっていた。
「えっ・・・・」
洋平は理由を説明した。
「俺の師匠みたいな人と手合わせしたいんだよ。その人ももうじき来るはずなんだ。だからお願いできないかな。」
「わかりました。部長を呼んできますね。」
彼女は洋介の前を離れ、部員が集まっている一団へと行った。
洋介はその間じっと待ちながら部員達を観察していた。
結構本気で稽古している人が多いようだ。

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