パニックスクール 54
ある一定の方向にだけ鈍感な洋平は気が付かず、頭に?を浮かべる。
「あの子ったら、照れちゃって」
と分かっていてからかう絵莉であった。
同時刻、収録を終えた柏原 深美は玄関前に置いている留守番電話のメッセージが届いているのに目に留まった。誰からだろうと再生ボタンを押してみる。
「ぐふふ……望ちゃん、今日も可愛かったよ。君が出ている番組は全部撮っているんだよ。それに駅の階段で見えていたよ。ぐふふ……可愛いパンツを履いているんだね。上にピンクのリボンがちょこんとあって可愛かったよぉ。あと、体重を気にするなんて可愛い所があるんだね、うひひ……望ちゃんの全ては僕の物だよね?僕はこんなにも望ちゃんを愛しているんだよ。ぐひひ……」
嫌悪感を煽るような声。ここ最近感じる視線に深美は精神的に追い詰められていた。
「誰か、助けて……」
相談したくても出来ない。
番組の収録ではどんなに笑顔を振りまいていても言い出せずにいた。
だが、彼女を救ってくれる人がいた。
ただ、屋上であったあまり印象に残っていないその人が、その人の友達が救ってくれるのを今は知らない。
今はただ、助けを求めて怯えて震えていた。
休み明けの学校の授業が終わり、背伸びをしていた洋平のかばんの中からマナーモードにしていた携帯電話を音が耳に届く。
誰だろうと思って携帯を取り出すと知らない電話番号からだった。
怪しいと思いながらも着信ボタンを押す。
「もしもし、魚崎ですが」
「よっ、洋平くん。久しぶりだね」
聞こえてきた声は懐かしい男の声。
兄貴分だった男、高丘 大成の声だった。
「大成さん!!えっ、なんで俺の番号知ってるの」
驚きはしたものの洋平の声色に喜色が浮かんでいる。
「菫に聞いたんだよ。それで今日は休日だったから暇潰しに菫の母校を見に行こうと思ってね」
「菫姉さんの?」
聞いてはたっと思い出す。菫の母校は姫川女学園。今は翠泉学園。
急いで窓の外を見ると綾奈と家族一緒に待っている高丘一家の姿が正門に見えていた。
あまつさえ手まで振っている。