パニックスクール 39
「一つ、聞くが弾は本物じゃないよな」
「当たり前でしょ!!この歳で殺人犯なんてなりたくないわよ!!」
的外れな洋平の問いに半ばツッコミを入れるかの如く返す光恵。
とは言うものの命が掛かってるだけに洋平は確認だけはしたかった。
「死にはしないけど、死ぬほど痛いわよ」
しみじみと言う光恵に洋平は口を引きつらせた。
「あんたが私の事どう考えているか、よーくわかったわ」
半眼で睨む光恵に苦笑いを漏らす洋平。
話の筋もいつの間にかずれてしまっている。
「話が脱線したわね。それで?返答は?」
「返答も何もあれは事故キスで解決……」
「そうです!!あれは事故でノーカンって事で話は着いたはずです!!」
いつの間にか絵美が下の階段の踊り場から声を出していた。
「今のお姉さまの声が」
ついでに右側から猛烈な勢いで走ってきて慣性ブレーキで来る麻美。
「って、なんで野蛮人がいるのよ!!早く、視界から外れなさいよ!!妊娠しちゃうでしょ!!」
「そんなんで妊娠するかよ!!すげぇ偏見だな、おい!!」
「空気妊娠するかもしれないじゃない!!ただでさえ一緒の空気を吸って汚染されているというのに!!」
過去、男に何かされたんじゃないかとばかりの勢いの偏見でまくし立ててくる麻美。
「ともかく、みんな落ち着け。というか、情報整理ぐらいさせてくれ」
場の混乱を落ち着かせようと洋平は切実に声を掛けるが。
「喋らないでよ!!空気が汚くなるじゃない」
と文句を言ってくる麻美。
どう言っても文句を言ってくるので洋平は麻美に関しては無視する事で諦めた。
「ともかく、キスに関しては前を見てなかったそっちも悪いし、こっちも見てなかったって事で諦め……」
「初めてのキスぐらい素敵な人とロマンティックにと決めていたのを事故如きで諦めれるわけないでしょうが!!けじめ位とれ!!あんた、男でしょ!!しかもその上、二股とはいい度胸ね」
「わー、待て待て!!銃口向けんな!!だいたい、俺ら付き合ってもいねぇって!!」
再び向けられた銃口に焦る洋平。
「そうです!!あれは事故ですから諦めてください。私もノーカンしますので魚崎君の初めてのき、き、キスは私が貰います」
普段の引っ込み思案さはどこへと言わんばかりに横から割り込む絵美。
「いや、それが昨日山根に不意打ちでやられたんだが」
と後頭部に大汗が垂らしながら白状する洋平。
「これだから男って野蛮でがさつで汚くて乱暴なんですから。ささっ、お姉さま。私に熱いベーゼを」
唇を突き出して飛び込んでくる麻美をさっと避ける絵美。
とはいえ、流石にキスを先にやられたと言うはそれなりにショックが大きかったらしい。
どこぞのコントの如く麻美は床に顔面ごとヘッドダイビング。
「大体、山根の顔をまともに見れなかったのも……がー、もう!!どこの羞恥プレイだよ!!」