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パニックスクール
恋愛リレー小説 - ラブコメ

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パニックスクール 36

(大体、なんで一年の時を思い出すんだよ!!)
昨年の冬休み前、由紀が何気なく洋平に好きと告白した。
帰り道の夕日の中、彼女の告白を洋平は友達として好きと受け取ってしまった。
彼女にとっては人生で初めての告白。
けれど、それは洋平は気付かずに流してしまったのだ。
せっかくの告白を流された彼女の心情は推して知るべし。
それからというもの、2人の関係は全く変化がなかった。
(そういえば、俺……山根にキスされたの初めてだった)
ふと思い出した時点で思考的な意味で洋平は泥沼の一方だった。
「どうしたのかしら、魚崎君。山根さんと何かあったのかしら?」
普段の2人らしからぬ態度と様子に同じクラスの紀子はいぶかしげに感づいた。
キーンコーンカーンコーン
昼になり、今日も食堂は腹をすかせた学生でごった返していた。
「今日も混んでるなぁ……。あ、ここで良いか。」
洋平はトンカツ定食を食べ始める。
と、そこへ
「ここ良い?」
「あぁ良……って山根かよ!何でお前が?」
声を掛けてきた人物、由紀に勢いでツッコミ返す。
昼飯ぐらいは顔を合わせずに済むかと思って洋平は油断していた。
「え?良いんでしょ?」
「そ、そうだけど……」
歯に物が詰まったような返事をしてしまう洋平。
その言い合いを見ていたのは委員長こと衛籐 紀子である。
「魚崎くん、なんだか今朝から山根さんを避けてない?」
「あ、委員長もそう思う?私も洋平に避けられてるな〜って思ってさ。」
「気のせいだ、気のせい」
一刻も早くここを立ち去ろうととんかつ定食をかきこむ洋平。
「ちょっと、そんなに慌てなくても」
「へーき、へーき。ごっそさん。先行くぜ」
あっという間に平らげると洋平は返却口へとはや歩きする。
らしくない洋平の姿に2人はしゃくぜんとしないまま、普段のペースで昼食を進めた。



由紀から逃げるように食堂を後にした洋平は午後の授業が始まるまで屋上で時間を潰そうと思い、そこへ向かった。
階段を上がっていき、人気の無い屋上の扉を開こうとして歌声が聞こえてきた。
どうやら、先客がいたようだ。
邪魔をするのも悪いかなと思い、そっと扉を開く。
人気の無い屋上に女子生徒が一人。
観客のいない舞台のように歌を響かせていた。
暫く、その歌声を聴いていると終わったようで歌が途切れる。
あまりの上手さに洋平は無意識に拍手をしていた。

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