パニックスクール 34
東北・上越新幹線の高架が見えると鉄道博物館までもうすぐだ。
その前に服にべっとりとはりつく汗が気持ち悪いので先に鉄道村へと2人は寄った。
男女別の風呂に入り、由紀が出てくるまで暫く洋平はリクライニングルームでのんびりとくつろぐ。
「ごめん、待たせちゃった?」
髪を結い上げ、浴衣姿の由紀が姿を現す。
浴衣から除く谷間とうなじがなんとも色っぽく、洋平は思わず見とれてしまった。
「どうしたの?ぼけっとしちゃって」
「い、いやいや。なんでもないぞ」
「?……まあいいや。それより何か食べよう」
慌ててとりつくろう洋平に由紀は疑問を浮かべながらも食事にしようと提案する。
風呂に入った後というのは急激に食欲が沸いて来るものだ。
それぞれ、食べたい物を注文してジオラマテーブルに向かう。
ここではテーブル中央にNゲージの列車を走らせている。
往年の特急つばめ、最新の700系東海道・山陽新幹線などがシャーと音を立てて駆け回っている。
「そういえば、クリーニングどれくらいで終わるって?」
「大体3時間ぐらいだって」
「まあ、汗かいてすぐ駆け込んだからなぁ。乾燥機かけてそんなもんか」
ご飯を食べ終わり、クリーニングに出した服がどれくらいで戻ってくるのか洋平が由紀に聞く。
時計を見るとまだ時間があり、それまでふたりは運動した疲れを癒そうとリクライニングルームで過ごした。
浴衣から洗い立ての石鹸の匂いをさせる服へと着替え、鉄道博物館へと向かう。
旧大宮工場を博物館へ改装しただけあって、さまざまな列車を二階から見下ろした時は迫力があった。
時空を超えた終結。時代と移り変わりが列車に反映されていた。
中央の転車台に人集まり、転車台の周りに柵が閉められる。
偶然だが、転車台回転のイベントが行われるようだ。
中央に展示されているのはC57−135。
入り口で貰った資料によると戦時中に製造された急行列車らしい。
GWだけあって子連れの親子が多く、子供は近くで見たいとばかりに転車台の周りに集まる。
転車台が回りだし、スタッフの解説が入る。
ゆっくりと一回転した後に勇ましく警笛が館内に響き渡る。
まるで今でも走れそうな、時代を超えて今も生き続けているとばかりに。
目を輝かせて機関車を見る洋平の子供っぽい一面に由紀はただ、微笑んでいた。
2人を祝福するように二度目の汽笛が響いた。
「洋平。なんか、楽しそうに見ていたね」
「まあな。ああ言うのはなんていうか、心を刺激されるというかな」