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パニックスクール
恋愛リレー小説 - ラブコメ

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パニックスクール 29

純粋無垢な綾奈の言葉が2人を追い討ちをかける。
「私が魚崎君の……まだ、キスもしてないし……」
顔を真っ赤にしている絵美だが、まんざらでもないようですっかり舞い上がってしまっている。
「そう言って貰えるのは嬉しいんだが、残念ながら斉藤とは友達だよ」
無慈悲にもその辺りは鈍い洋平は平然と否定した。
幸せな間柄を妄想していた絵美にとっては天国から地獄に落とされた気分とばかりに落ち込む。
「友達。そうよね……友達よね」
「おーい、斉藤。どうした?そんなに落ち込んで?」
「何でもないから……大丈夫よ」
「大丈夫って……ぜんぜん大丈夫じゃねぇって!!何か悩みでもあるのか?」
と否定した本人から絵美は慰められる有様となってしまった。



その頃、別の場所ではお姉様こと、絵美の傍には己が居るべきだと主張する麻美は
「ああ、愛しのお姉さまは何処へ。あの野蛮人の毒牙にかかってないかと心配ですわ」
と言いながら探していた。
一見するとそれなりに一部を除いて容姿が整っている麻美だが、実は言動で全て台無しになってしまっているのは周りも承知している事だった。
彼女が言う『お姉さまレーダー』だの『絵美探査機』だのは現在は不調の模様。
そして、絵美はというと彼女主観である野蛮人こと洋平と遊んであげている綾奈と一緒とは露とも知らずに居たのであった。



世間でGWと呼ばれる週間。学生達や一部の社会人にとっては嬉しい連休。
その初日から朝と呼ぶにはやや遅い時間にも関わらず洋平は寝ていた。
夜更かしして未だ寝ているのではなく、二度寝なのだ。
東の空が明るくなってすらいない内に玄太郎に叩き起こされ、車で揺られる事一時間。
軽トラで高速に乗り、首都高から湾岸線を通って着いた場所が中央卸売市場だった。
競の威勢の良い声が響き、今朝水揚げされたばかりの新鮮な魚介類が並ぶ。
今日、売りに出す食品が入ったプラスチックを軽トラに積み入れ、家に帰り着く頃には6時を回っていた。
いつもならこの後、朝の仕込みに入るのだが今日は珍しい事にしなくてもいいと言われたのだ。
流石に何か無茶な要求かまされるかと洋平は訝しげにしていたが、眠気に付き纏われている状態でミスをされては元も子も無いからと言うのが理由だった。

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