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パニックスクール
恋愛リレー小説 - ラブコメ

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パニックスクール 21

「あら、おかえりなさい。」
どこかおっとりとした声が返ってきた。
とんとんとん・・・
野菜を刻む包丁の音がする。
洋平は台所へやってきた。
するとそこでは、洋平の母親の魚崎 奄美(うおざき あまみ)がエプロン姿で料理をしていた。
「あっ。母さん。駄目だよ寝てないと。」
「ううん。今日はなんだか調子がいいの。洋平、あなた今日いいことがあったんじゃない?」
「いや別に。」
「お母さんはカンでわかるのよ。洋平、あなた誰か女の子に好かれることでもしたんじゃないの?ふふ。」
血の気が薄く白い綺麗な顔をした、どこか儚げな雰囲気を身に纏った母は、いつに無く明るさを身に纏っている。
「お、俺、そろそろ古武術の修行いかなくちゃ。」
慌てて道着を取りに自分の部屋へ走る洋平を、奄美の声が追う。
「洋平、今日のお夕飯はカツ丼よ。」

稽古を終えた頃、奄美が夕食の用意を終え、洋平達を呼んだ。
「美味そう〜。」
「ふふ、ありがとう。」
「いただきます。」
全員が一斉に箸を取る。
「ん、最高。卵も半熟だし、肉も柔らかい。」
「あらあら。」
奄美はそういって笑った。
「洋平、冷蔵庫にビールあるから持ってこい」
「面倒くさがらずに自分で取ってこいよ、親父」
「はいはい、私が取ってきますから食事を続けなさい」
玄太郎の頼みを渋った洋平だが、奄美が仕方が無いとばかりに立ち上がる。
「いいよ。母さんは座ってて。それにたまに運動させないと親父の奴、メタボになるし」
「んだと、この野郎。それにビール程度で肥えてたまるかってんだ!!」
「2人とも、ちょっと落ち着きなさいな」
立ち上がりかけた奄美を座らせて、洋平は冷蔵庫に向かう。扉を開けるとビールの缶が数本置いてある。
よく冷やされた缶の冷たさを感じつつ、扉を閉めて、玄太郎の席に持っていく。
「あんま呑み過ぎんなよ。世話をするのは俺か母さんなんだから」
「へいへい」
プルタブを開けて、空気の抜ける音がする。ガラスのコップに小麦色の液体が並々と注がれていく。
あんなものの何処が美味しいのやらと毎度の如く思いながら洋平は食事を続ける。

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