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楽恋鉄路旅情
恋愛リレー小説 - ラブコメ

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楽恋鉄路旅情 6

ロータリーには車どころか人もいない。信号機が青く光っているだけだった。僕らはとりあえず信号を渡って歩きだした。駅前には旅籠のような駅前旅館がいくつかあったがやっているかどうかはわからない。とりあえず街のメインストリートを歩いているはずだがよくわからない。
直江津はもともと港町だから駅の周りはあまり発展していなくてコンビニもない。しばらく行くと道路は右に曲がって行くが、僕らはまっすぐ続く細い道を歩いていく。
「ねぇ、寒いんだけどさぁ・・・手袋持ってないのよねぇ・・・」
「え?そういわれても僕も手袋はないなぁ・・・」
「・・・バカ」
「え?僕、なんかした?」
彼女はそっぽを向いて左手を突き出してきた。
「あ、ごめん。気づかなかった」
「こ、こんど気がきかなかったら、怒るんだからねっ。」
「あ、ごめんごめん。(怒らしたら大変だろうけど怒ったのも可愛いかも)」
彼女のつめたい左手をとり、また歩き出した。だんだんと古めかしい建物が増えてきた。空がだんだんと紫色になってきた。少し風が強くなった。
そのうち十字路をすぎると信号が出てきたので、横断歩道を渡ったら海の音が聞こえてきた。
「潮騒」は騒がしいわけでもないと思う。でも、きっと波の音が騒がしいから潮騒なのだろう。しかし「潮騒」を波の音だと決めたのは誰であろうか?潮騒は海の音全てで、波の音だけでは無いのだと僕はいつも思う。
ちなみに「しおさい」はもう新型車両に置き換えられてしまった。
さて、とりあえず僕らは海に一番近い所まで行って腰をおろした。鮮やかな空は太平洋に昇る朝日とはまた違った趣のある紫色だった。幻想的な景色という言葉とはまた違った表現が必要だとおもうが、残念ながら僕はそういう日本語を知らない。
隣にいる彼女は海を見つめている。彼女の視線の先には黄色い地平線。
彼女の瞳から一粒の涙がこぼれ落ちた。
「・・・どうしたんだよ?」
「・・・ありがとう」
「・・・まあなっ・・・」

西の空は紫色に染まっている。灰色の雲がまだらに空の色を隠しているがそのコントラストが水彩画のようで、灰色にきらきら光る海と絶妙な対を成している。僕は彼女の肩に腕を回してそっと抱き寄せた。

 その後、僕らは静かな街を戻り駅の待合室で時間を潰すことにした。
信越線のホームには「あさま」色の189系「快速妙高」が止まっていた。車内はグレードアップ仕様になっているが外見は「あさま」だ。
「189のグレードアップってシンボルマークがないから間の抜けた顔をしてるわね。」
「たしかに。でも彩野みたいなのよりは・・・」

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