PiPi's World 投稿小説

楽恋鉄路旅情
恋愛リレー小説 - ラブコメ

の最初へ
 3
 5
の最後へ

楽恋鉄路旅情 5

窓の外を見ても真っ暗で何も見えない。能登を果たして夜汽車と呼んでいいのかはわからないが、伝統ある列車だからいいと思う。外は寒そうだ。
僕らはとりあえずデッキに出て彼女は身支度を整える。デッキはすきま風が入ってきて格段と寒い。なんだか、踏切の音と赤い警告灯が流れて闇にのまれていくようだ。
列車は鉄橋で川を越えるとそろそろ直江津である。国道の街灯とコンビニの明かり以外に光りはない。
反対側の窓からは直江津の車庫が見えてきた。一番奥の方に北越急行のHK100と信越線の189系の「あさま」色が少し見えた。ほかには115の新長野色が大量に屯している。オレンジ色のヤード灯が照らし出すそれらは妙にコントラストがあって新鮮だった。
列車はホームに入線し、古めかしいブレーキ音を以て停車した。エアーが抜ける音がすると扉があく。ステップを降りるとまだ夜の寒さがしんしんと体に響く。
「やっぱり489はかっこいいわね。色もいいけど、クーラーもバランスがいいわ。」 
「そうだね。しかも日本最後の現役ボンネットだからね。485の訓練車も鉄道博物館行きみたいだし。」
「頭を見に行かない?」
「そうだね。少し時間あるかな。」
少し走って頭を見に行く。頭と行っても一番後ろだからしんがりだ。やっぱりいいね。ボンネット。能登の先頭車は485系や181系の初期型と同じボンネット車両だ。「あずさ」「あさま」「とき」「雷鳥」「にちりん」などで使用されていた形の先頭車である。ヒゲがついていることと連結器がついている他はほとんど外見上に差異はない。
連結器とは、昔まだ信越本線に碓氷峠があった頃に電気機関車とをつないでいた連結器である。さっき車庫にいた「あさま」もそうだ。どちらの車両もくたびれているがまだ現役である。
ドアが閉まったのでそろそろ出発だ。列車はすべるようにホームを離れていく。テールランプが夜闇に吸い込まれていく。
 さて、とりあえず「きたぐに」が来るあと2時間ほどあるので日の出を見に行くことにしよう。
直江津は橋上駅舎なので階段を上がる。階段を上がると改札があってとなりに待合室があるが仮眠室と化していた。
「ねぇ、一体どこで日の出が見えるの?」
「海岸まで歩くのさ」
「遠いんじゃないの?」
「多分大丈夫。」
彼女はとても心配そうな顔をしているが、地図では大した距離ではなかったはず。
改札をでてエスカレーターを降りるとさっきより寒い気がする。

SNSでこの小説を紹介

ラブコメの他のリレー小説

こちらから小説を探す