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遠い夏の日の思い出
恋愛リレー小説 - 大人

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遠い夏の日の思い出 13

「俺…高校に入ってからずっと何かが足りない気がしてたんだ。でも、それが何なのかは自分ではわからなくて…。そんな俺の様子が変な事にそばに居た沙羅は気が付いていたんだ。それが振られた原因」
「えっ?」

そんな……私は驚いた。
まさか…涼ちゃんが原因だったなんて…。

「そんで、お前がこの島を出て東京に行って…同じ気持ちになったんだ…。その時わかったんだよ、足りないものが何なのか…」
私は涼ちゃんの次の言葉に耳を疑った。
「彩…お前だ」
「なっ!!」
私は驚きのあまり声が出ない…。
涼ちゃんが…私を…??
私は頭の中が真っ白になった。ずっと聞きたかった言葉なのに…急に言われても何が何だかわからない…。
「お前はずっとそばに居たのに…ここに居てくれてたのに…あまりにも近過ぎて気がつかなかった…」
「涼ちゃ…」
「どーしてもっと早く気が付かなかったんだ…俺ってかなり鈍感かもな…」

『涼ちゃん…今どんな顔して話してるの?これは夢?それとも現実?』
私は頭の中で何度も繰り返す…。
「涼ちゃん、もう大丈夫だから降ろして…」
「でも…」
「いいからっ!」
私は涼ちゃんの背中から慌てて降りた。
足の痛みよりも胸の痛みの方が気になってしょーがない。なんとかしてほしい。
「涼ちゃ…あの…」
「ん?なに?」
でもなかなか上手く言葉がでて来ない。


暫く二人の間に沈黙が続く…。


そんな沈黙をやぶったのは涼ちゃんの方だった。
「俺、あの日…お前が帰って来た日…。
お前が帰って来たって聞いて慌ててあの場所に行ったんだ…」
「えっ…?」

今なら…今だったら言えるかもしれない…。

「涼ちゃん、私ね…東京行ってからもずっと…ずっと涼ちゃんのことが忘れられなくて…誰と居ても比べちゃって…道踏み外したこともあった。そんな五年間を消してしまいたい…なかったことにしたい。じゃないと…私…」
「いいんじゃない?」
「えっ…」
「そうやって立ち止まったり、遠回りしたり、たまには振り返ったり…。そうゆう毎日の一つ、一つの積み重ねがあるからいろんな事に気付かされることができる…今までの彩も、今の彩も、これからの彩も全部…彩であることには変わりないでしょ?」

なんか救われた気がする…肩に乗っていた重い物がスーッと取れた。
この涼ちゃんの一言で…。
「あっ、ありがとう涼ちゃん。私…本当に涼ちゃんを好きになって良かった」
「彩…」
涼ちゃんは優しく私を抱き寄せた。

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