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遠い夏の日の思い出
恋愛リレー小説 - 大人

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遠い夏の日の思い出 2

涼汰は私の隣に座って海を眺めている…。

心地良い時間が流れていた…

私たちは小学校も中学校も一緒で小さな島だから小学校の時は、一年生と二年生が一緒に勉強して、三年生と四年生、五年生と六年生が一緒だった。
私と涼汰は一歳違いだったからいつも一緒だったのだ…。
家も近かったせいもあり家の親と涼汰の親はとても仲が良く、学校の登下校はいつも涼汰と行かされ帰りにはいつもここで道草して帰っていたっけ…

と私も海を眺めながらそんな事を考えている…
すると―クスッと涼汰がこちらを見て笑った…。
「なっ…何よ!?」
「彩って変わってないなぁーて思ってさ」
と慌てる私に涼汰はまたクスクス笑う…
涼汰がいつもそうやって私を茶化すから…私もつられて笑ってしまうのだ。
そして、私も思わず
「涼汰も変わってないね」と言ってしまう…
すると、涼汰はニッと笑ってこちらを見る。
「何だよその呼び方…俺を呼びすてにするなんていつからそんなに偉くなったんだ?」
と悪戯っぽく言う涼汰に私はもうと頬を膨らませ仕方なく
「ごめんね、涼ちゃん。ちょっと大人ぶってみたかったの…」
と呼び直す。
そう、私は昔から涼汰のことを涼ちゃんて呼んでいたのだ。
私が呼び直すとヨシッとまるで犬でも扱うかの様に、私の頭にポンッポンッと涼ちゃんは掌を乗せて微笑んだ…。

そんな涼ちゃんの笑顔に私の二十年間の想いが一気に溢れそうになる…何度も伝え様として飲み込んで心の奥にしまってきた想い…

私が口を開こううとした時、涼ちゃんは急に立ち上がり私に手を差し延べた。
「えっ?」
「ほら…行くよ」
「行くよってどこ…」
私が言い終わる前に涼ちゃんは、私の手を取りグイッと私を立ち上がらせて走り出した。
「ちょっ…涼ちゃん?」
私の問い掛けを全く無視して走り出した涼ちゃんは何故か楽しそうだった…。

暫く走り続けると今度は急に立ち止まり、肩を上下に揺らしながら手を膝に当てて私たちはハァハァと息を切らして額にうっすらと汗を輝かせている…。

私たちがたどり着いた所は島の小さな居酒屋の前だった。
嫌な予感がした私は涼ちゃんに尋ねてみる…
「もしかして…ここ入るなんて言わないよね…?」
「えっ?入るんだよ」
と当然の様な顔をした涼ちゃんに背中を押されながら中に入ると、そこにはうちの家族やら涼ちゃんの家族やら友達やら近所の皆さんが勢揃いしていた。
驚きのあまり呆然としていると
「今日は、彩お帰りなさいパーティーだ」
と後ろから涼ちゃんの声が聞こえた。

私はなんだか嬉しくてホッとして目から溢れ出てきたものを押さえることができずにいた…。

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