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虐待少女
恋愛リレー小説 - 少年/少女

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虐待少女 3


そう言いながらも、孝平はその自分の言動に居たたまれなさを感じていた。
背後に智子の存在を感じ、スニーカーの紐を縛る指が震えた。

小学4年生の少女に向かい自分は何を疑っているのか?
有らぬ考えが頭を過ったこと自体が厭らしく、そんなことと結び付けて考えた自分が情けなくもあった。
それは、つい数年前まで大人の世界忌み嫌っていたあの頃を思い起こさせ、
18になった今、その汚い世界に自分が足を踏み入れたようで怖かった。

"まだ俺は汚れたくはない・・・"

遠くに走る幹線道路からパトカーのサイレン音が流れていった。
降り出したのだろう、どこからともなくポツポツとしたリズム音が聞こえてきた。
そして・・その音に智子の啜り泣く声が混じる・・・

孝平は紐を絞める手に力を込める。手首がプルプルと震え、プツリ!と紐が千切れた・・・

『ごめん!!』
孝平は智子に駆け寄り、その頭をしっかりと抱き締めた。
……つもりだった。靴を結び損ね、良心に駆り立てられた孝平は確かにまっすぐに智子に向かって走り出していたのだ。だがしかし、その瞬間に彼女は孝平のその行動を予測していたかのようにして、必死に叫んだ。

「大丈夫です!!」

その声に孝平は思わずたじろぎ、前方に広げた腕が何かを抱き留めることはなく、そのまま空を描いてスッと足の横へと落ちた。と、同時に安堵していた。どんな理由にせよ、”触れなかった”ことに対して。孝平と智子はしばらくそのまま向かい合う形で佇んでいた。

当たり前だがやましい気持ちで手を広げたわけではない。ここまで救っておきながら、あたかもその面倒事から逃げるかのような、確かに金を渡して帰ってくれればなんていうことはない。そうすれば自分が危うく性犯罪者の容疑者として名前が上がることもないし、人助けはしたから…なんて。

ただその逆、ここで彼女を助けたところで、自分に何ができる?一人暮らしの一学生が、虐待されている一人の少女をどうやって救う?ドラマやアニメならばすぐにでもうちに住めと言い、どこからともなく調達される豪華な材料に達者な料理の腕、波乱万丈ながらにピンチを駆け抜けて、その結末は彼女が成人してからのプロポーズ。これでめでたしハッピーエンド。そんな都合のいい話はない。

ともかく、現実問題難しいというのが一つ。それともう一つ大きな点は、やはり二次災害の危惧である。
偶然部屋を覗いてしまった宅配業者が風呂上りの彼女を見てしまい、通報されたらそれで一巻の終わりだ。
それはできるならばいくらでも人助けはしたい。だから現に今こうして彼女は孝平の家にいるのだが、この先はどうすればいいのか自分にもわからない。何ができるかわからない。どちらの選択をしても最初に”手を出した時点で”偽善に思えてならないのだ。

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