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虐待少女
恋愛リレー小説 - 少年/少女

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虐待少女 4


それでも良心に突き動かされた。同情してしまったと言ってもいいのかもしれない。あるいはどこかに邪な気持ちがあるのかもしれないし、智子にはそういう魔力が備わっているのかもしれない。

最初に逃げようとしたときの理由が頭を過る。それでも今自分がしていることが正しいと思う他なかった。本当にそこまで深く考えていたか確かめるのは難しいが。
思わぬ智子の叫びによって静止した孝平は、そんなことを考えながら智子のことをぼんやりと眺めていた。
しばらくの沈黙の後、まるでなんとか声が出せるようになったような風に智子は口を動かして。

「……すみません……ごめんなさい」

それは本当に消え入るような、言葉というよりは沈黙の方に近いほど小さな声で。それでも確かに孝平は口の動きと今にも泣きだしそうな智子の表情から読み取ることができた。しかし、我に返った孝平はその言葉の真意までは読み取れず。

「いや、どうして謝るのさ…?」

「私が、悪かったんです……。急にお邪魔したのに、優しくされて……つい嬉しくなってしまって勘違いしてしまっていたようです……。お金は、お返しします。私一人でも帰れますので……ご飯、本当においしかったです。……ありがとうございました」

それは先よりは聞き取りやすくも、涙のせいか掠れてところどころがやはり聞きづらかった。
それでも意図することは理解できた。と、智子はそれを発すると、まさに公園であった時の未来への恐怖と、希望のない世界を生きているかのような表情で。そんな絶望の色を浮かべ涙を零しながら孝平に一瞥し、その横を幽霊のようにすっと通り、玄関へと歩いて行った。

思わず呆然と立ち尽くしていた孝平はまたすぐに意識を取り戻し、振り返ると同時に呼びかける。

「お、おい!それ、どういう意味だよ。まさか……母親のところに帰る、ってことか?」

先までそれを自分が勧めようとしていたのに。しかし今の智子の表情を見た時、文字通り身震いしてしまった。孝平は、そこまで酷な宣告をしてしまったのかと何とも言えぬ罪悪感に襲われて。

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