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虐待少女
恋愛リレー小説 - 少年/少女

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虐待少女 2

 二人の沈黙の時間は、少し続いた。孝平は、壁に掛けてある時計に目を向ける時刻は午前1時を過ぎていた。本来学校に通っている子供達なら、とっくに夢の中なのに…と、考えてしまった。色々と、考えたが、一時的とはいえ、今この子の身の安全を授かる者として、自分が出来る事をしようと…と、孝平は腰を上げた。
「お腹空いただろう?ちょっと食事作って来るよ」
 孝平は、直ぐ近くにあるキッチンで、簡単な手料理を作り始める。智子は、その様子を無言の眼差しで眺めていた。青年が、一人の少女の為に狭いキッチンで、包丁を使い鍋にお湯を沸かしている。智子は、不思議な光景だと思ってみていた。
 しばらくして、テーブルの上に手軽とはいえ美味しいそうな料理が並べられた。
 スパゲッティのミートスパ、サーモンと野菜のマリネ、コンソメスープ、果実100%のジュース。
「遠慮しないで食べて良いよ、少し多めに作ったから、おかわりもあるよ」

 そう言われて智子は、軽く一口スパゲッティを口にする。それを食べるとポロポロと、大粒の涙を流し始める。
 「ゴメン、口に合わなかった?」と、孝平が言うと。
 智子は、無言で首を横に降り「違うの…」と、答える。
 少し間を置いて智子は「すごく美味しいわ…」と、言う。
 「じゃあ、なんで泣くの?」
 「…嬉しいの…、こんなに優しくしてもらったの…私、今まで母の手料理さえ、食べた事無くて…。人が作る料理が、こんなに味わい深い物だなんて、始めて知ったの…」
 智子は、そう言うと、しばらく涙を流し続けた。孝平も、こんなに人から感謝されるのは何時以来だろうと、思い返す。
 食事が終えた後、夜も遅いから、智子を自分のベッドに寝かせて、孝平は、近くにあるソファーで寝る事にした。
 次の日の朝、午前6時、ふと智子は何気なく目を覚ます。目を開けると見慣れない天井が見えた。自分の昨日までの行動を思い出し、ふと、目線を横に向けると、自分を保護してくれた須藤孝平の姿があった。彼は、朝早くからキッチンに立って何か作っているようであった。智子は、ベッドから起き上がり何か手伝える事は無いかと、孝平の近くへと行く。
「やあ…お早う。お目覚めは如何ですか、お嬢様」
「あ…あの、何か手伝える事はありませんか?」
「別に良いよ、それより御飯出来るから、テーブルで待っててくれる」
「は…はい」そう言われて、智子はテーブルに座る。
 テーブルの上には、二人分の食事が、何品か並べられていた。
 目の前には、焼き海苔。中央の皿には焼きベーコン、目玉焼き、そして漬物。そして孝平が来て出来たての味噌汁の入った鍋を置く。
「さあ、食べようか」そう言って、孝平は、小さなお茶碗を持ち出して、出来たての真っ白な御飯を盛り付けて、智子に差し伸べる。
 御飯を受け取った智子は、純白米の甘い香りを吸い込んだ。(美味しそうな香り…)智子は、御飯を一口噛むと、口の中に広がる甘い味を堪能した。

 
  (美味しい…作ってくれる御飯が、こんなに美味しいなんて…)そう考えると、智子の瞳に再び涙が溢れ出て来た。
「君は、本当に涙もろいね。ほら、コレで涙拭いて…」孝平は、智子にハンカチを手渡す。
「ありがとう…」ハンカチを受け取って、智子は、涙で濡れた瞳を拭き取る。
 朝食を食べ終えると孝平は、二人分の食器を洗い片付ける。智子は、テーブルに向かって座り込み、無言の眼差しで孝平の後姿を見ていた。しばらくして、孝平がお茶を持って来て二人分注ぐと、一つを智子に差し出す。
「え…と、そう言えば、まだ名前を聞いていなかったけど、なんて言うの?」
「あ…ハイ。すみませんでした。私の名前は藤原智子と言います。小学4年になります」
「名前だけで良かったのに、自己紹介までしてくれるなんて、随分親切だね」
「す…すみません。他の人はイロイロと聞いてくるので…つい…」
「ふ…ん…他にも、そう言う関係持っている人がいるんだ…」
 智子は、ハッと孝平の顔を見る、その表情は、昨夜出会った時の穏やかな表情では無く、相手を疑う眼差しの様であった。
 「あ…あの…私は、他の人との、変な関係はありません…し、信じて下さい」
 智子は、慌てふためき言う。顔が赤面して、どう切り出して良いのか分からなくなっていた。
 「君が、何処で誰と、どう言う関係を持っているかは知らないし…、知りたいとも思わない。俺は、君には指一本触れていない…その上、食事を提供したのだから立場上…俺は、君を保護した身である、その辺はわきまえてくれよ」
 「私は、どうすれば良いのですか?家には帰りたくはありません…」
 「自分で考えてくれ、子供だから最低限の世話はするけど、他にも沢山いるのだろう?お金を提供してくれる、おじさん達が…」
 「そんな人いません!そんな目で私を見ないで下さい!」
 智子は、両手を頬に当てて首を降る、黒く長い髪が揺れて乱れた。
 「私…始めてでした…。こんなに温かく、心から嬉しい気持ちになったのは…。孝平さんが始めてです。それなのに…突然冷たい目で見るなんて、あんまりです…」
 孝平は、無言のまま立ち上がり、智子のそばに千円札を2枚置く。
 「これで、帰れる筈だ。後は自分で何とかしてくれ…。鍵は下のメールボックスに入れて置いてくれ」

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