先生~二人のだけの秘密~ 3
「まじで…心配したんだから……」
彼女は先生にしがみつき大声を出して泣いた。
他の患者さんや看護婦さん達も、何事かと集まってきた
「ごめん…ごめん」
先生は苦笑いをしながら彼女を撫でてやった。でも、その表情は穏やかだった。
ズキン
もしかして……
先生は私の思いに気付いたのか
「これ、アネキ…」
としがみついているものを指差して言った
『姉貴かなりのブラコンでさぁ…って姉貴いい加減離れてくれよ?』
と先生は苦笑いしながらお姉さんを近くにあった椅子に座らせた。私は内心すっごく安心した…だってあの女の人が先生の恋人だと思ったからである。まぁ間違って当然のことだと思う。
『…ごめんなさいね。お父さんからいきなり電話きて貴方が事故ったから代わりに様子みてきてくれって言われるんだですもの…大した怪我じゃなくて…私仕事の途中だから一度会社に戻ってまたくるから。じゃあまた後でね』
先生のお姉さんは先生にそう言って病室から出ていった。
「相原……もしかして本気で心配してくれてた?」
「あ…当たり前じゃん!交通事故なんて聞いたら、誰でも心配するって…」
そういいながらも私の目からは涙が溢れてとまらなかった。
私は心から思った。先生が、無事で本当によかった、と。
「…ごめんな…相原」
先生は優しい笑顔でそう言って、私の頭をポンポンと軽く叩いた。「もぉ、上ちゃん、私もう子供じゃないんだからね…!」
少しふくれっ顔をして言った私だけど、内心先生の手が頭に触れていることに、すごくドキドキしていた。
なんでだろ…いつもはこんな気持ちになったことないのに。
「なぁ…一つ聞いてもいいか」
髪に触れたままの先生の手を意識していた私の頭上から降る声に、一瞬鼓動が乱れる。
「なっ…何を?」
かすれぎみの声が動揺を表していて、ますます胸の鼓動が早くなる。
(…口から心臓でそう)
先生の次の言葉が出るまでの時間がこんなに長く感じるなんて…。
「お前、授業どうした?」「……………」
何よ!そんなこと?
今までの意味深な間は一体何!?
「何だよ?さっきまでしおらしく泣いてた奴とまるで別人みたいなカオは」
…忘れてた。この人、わたしの担任だった。