先生~二人のだけの秘密~ 1
…ギィ‥。
重たいドアを開け、心地良い風の通る屋上へ出る。今日も‥空はただ青い─‥
変わってゆく事は嫌いじゃない。不変的なものも魅力的だけど、そもそも生きて行くって事は変わって行くって事だし。だから多分人はそれに順応出来る力を持っている。
音楽室からは新一年生が校歌の練習をしているのが聞こえる。あたしも去年の今ごろは、あんな風に必死で歌詞を暗記したっけ。
「はぁ・・ねるかぁ。」
ここは本当に気持ちいい。広い空を独り占めしてる気分になれるから。雲が流れて、風がふいて・・・
Zzz…
ん〜・・誰かが呼んでるよ・・「相原!!」――…
「…だ・・れ?」
「俺。」ビックリして飛び起きる。たっ…たっ…たっ担任じゃんっ!
「気持ち良さそうだなぁ。相原。俺様が担当の授業をサボってこんなとこで寝てるとは!」頭をぐりぐりされる。
「ごめんって!ごめん!上ちゃん。ギブっ!ギブ!」
担任の名前は上田貴之。だから上ちゃん。
「しっかし気持ち良いなぁ。ここは。」
空を仰ぐ上ちゃん。
「でっしょ。私の隠れ家なの。ここだけ陰になってて誰にも見つからないの…。みつかったけど。」
振り返った上ちゃんが満面の笑みで「お前の考えそうなことくらいお見通しです。」
笑顔にドキッとした。なんか可愛いじゃん。
上ちゃんは去年もあたしの担任だった。この学校で1番若い先生だ。
結構、男前な方だとは思う。身長も高いし、スラッとしてて、色白の爽やか系だから、女子からの人気は当然。
でも、いつも寝癖がついたまま学校に来る。本人は、「一応直してるんだけど…」って言い張ってるけど、全然直ってない。
まぁ、そういう所とかが他の先生と違って お堅くなくて、男女問わない上ちゃんの人気の秘訣なのかな。
今考えれば私はそーゆーとこに惚れていたのかもしれない。次の日朝早く学校に来すぎた私は机に座り昼寝?(まだ朝だが)を始めた。私が眠りにつきそうなとき、いきなりドアがガラっと開き私の親友亜紀が入って来た。私はねむたそーに「どしたの?」って聞くと、「上ちゃんが・・交通事故に会って今朝病院に運ばれたらしいの・・」と言った。私はすぐにかけだし、病院へと向かった。