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君がいなかったら
恋愛リレー小説 - 理想の恋愛

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君がいなかったら 5


既に先陣がいるとみえて、脱衣場のカゴには、短パンと一緒にそのまま脱いだと思われる、ブルーストライプのトランクスがその姿のまま収められていた。
俺はおずおずと後退りするしかなかった。
小便をしても治まることのなかった男の昂りを見せていては、男同士とはいえ、さすがにそれを他人に晒すのは憚られた。

ギッシ…
踵の重みで板張りの床が、大きく音を発てて軋んだ。

「誰…だぁ?…」
浴室の引き戸が勢いよく開き、頭に泡を立てた男が俺を顧みた。

男はキョトンした眼で俺の顔を見、その後、何かを思い出したように「あ〜昨夜のお客人かぁ〜」と声を浴室に響き渡らせた。

昨晩、車掌に絡んできた…高嶋と呼ばれていた、あの酒癖の悪い男だった。

「あ、…おはようございます…」俺はコクリと頭を下げた。

「おっ、昨晩は悪かったな…遠慮しないで入ってくれよ…」
高嶋も気まずのだろう…頭をもしゃもしゃと掻き、浴室内に姿を消した。

俺がここで入るのを止めるのも、高嶋の顔を潰しかねないと思え、
渋々ではあるが、服を脱ぐと、濡れ染みのできたボクサーパンツをTシャツの下に潜らかした。
昂りはというと、高嶋の顔を見た途端に、その勢いは半減していた。
あれほどに熱り勃っていたというのに、男の性は厳禁なものだと、俺は他人事のように可笑しくもあった。

それでも半勃ちのソコを晒す訳にもいかず、右手でソコを覆い隠しながら浴室に入ると、高嶋は背を向け、髪を泡立ている最中だった。
俺は掛け湯も早々に、湯船に身を沈めた。

「いやぁ〜面目無い…」
「はい?」

高嶋は頭の泡をそのままに、今度は石鹸を全身に塗りたくりっていた。

「いつも酒に呑まれてしまう…」
「はい…」
「素面の時は思ってもいないことが、口から出る…」
「はあ…」

日に焼けた小麦色の背中は、面白いように石鹸で真っ白になっていた。

「だから若い奴から嫌われる…」
「若い奴だなんて、高嶋さんだって若いじゃないですか…」
「もう若くはない…40になる。皆から煙たがられるのは分かっている…」

40には見えないその若々しい外見に驚きはしたものの、店長と同じ歳なのかと思うと納得もいった。

高嶋は頭から湯をかぶると、俺の方に向き直った。
豊富な恥毛の中から、垂れた高嶋自身が目に入り、俺は自然に目を反らした。

「それにしても、昨晩は驚いたよ…」
「はい?」

高嶋が湯舟に入ると、満たされた湯が大きく波を打って流れ出た。
決して広くはない湯舟の中で、横に並ぶ高嶋の腕が密着し、俺は気恥ずかしさを覚えた。

「お前さんのご開帳だよ…」
「あっ……!……はい…」

俺は高嶋が、湯の上から俺自身を見下ろしているのに気づき、あわててソコを押さえた。

「ははは。そんなモン、気にすることはないさ。朝なんだから仕方ない。」
そう言われても、…"そうですか"…と割り切れるほどの集団生活をしたこともない俺は、ただ顔を赤らめるしかなかった。

「男ばっかで生活してるから、そんなんは見慣れているさ。」
高嶋は気に止める様子も無く、ザブザブと湯で顔を拭った。

「それよりも、昨晩のことの方が驚いたよ。酒も呑んでないのに、あんな事、なかなかできるもんじゃない…」
「は・恥ずかしいです…」
「そんなことないさ。友達のために恥ずかしさをも厭わないお前さんの姿…なかなかかっこよかったぜ」
「そ・そうですかぁ?」
「ああ。最近の若い奴の中には、この浴室ですらタオルを巻いて入る奴もいるんだ。」
「はあ…」
「そんな中で、あんなに正々堂々と自分自身を晒す奴を見ると、返って気持ちよかったよ」

高嶋の言葉とは裏腹に、そんなに堂々と自分のモノを晒したのかと、後悔の念を抱かざるおえなかったが、
それでも"かっこよかった"と言われ、"気持ちよかった"と言ってもらえると、悪い気がする訳もなかった。

「まあ、恥ずかしい思いをさせた張本人が、偉そうなことを言えた話しでもないけどな…」
高嶋は自らの額を湯と共にピシャリと叩いた。

酒により人格や人相さえも変貌する輩を、俺は居酒屋のバイトで幾人も見てきた。
高嶋も確かにそういった種類の人間であると思われたが、
酒の抜けた今の高嶋は、至って人当たり良く穏やかで、俺は好感を抱かずにはいられなかった。

「詫びに背中、流すよ…」
そう言いながら勢いよく高嶋が湯船を出ると、その中の湯は半減した。
「お、どうした?遠慮はいらないぜ。」
「は…はい…」
俺は少なくなった湯に浸かった自身を確かめ、
ソコが幾分かは鎮まったことに安堵しながら、飛沫を上げながら高嶋の前に立ち上がった。

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