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恋愛リレー小説 - 理想の恋愛

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「そ・そっかぁ〜」
何を勘違いしたのか、祐之先輩は照れたようにはにかみ、和美に微笑んできた。

確かに可愛いタイプは好きではないと、和美は言いはしたが、
それは内田篤人と長谷部誠とを比べてのことで、
それが佐藤洋平と祐之先輩に置き換えて考えられるなどとは、思ってもみなかった。

しかし祐之先輩が勘違いするのも無理はなかった。
全日本キャプテンの長谷部誠と、我がサークルの部長である祐之先輩は、
どちらも個性極まりない人材を、束ねるという立場においては変わりはなかった。

そしていつも規律に忠実で、潰しのきかなさそうな真面目さも、祐之先輩は長谷部誠と似ているようにも思えた。

和美は祐之先輩の手の平の、熱い感触を腰に感じ、肝試しの小道へと誘われていた。

月灯りが木漏れ日のように、続く小道に斑模様を作っていた。
遠くでフクロウの鳴き声が聞こえ、その暗がりに目をやると、真実と猛先輩がキスをしていた。

「林もヤルなぁ〜。略奪愛ってとこだな。」
祐之先輩の声は、滑りを含んでいた。

長年の片思いの末に結ばれた、今の彼氏と真実が、そう簡単に別れるとは、和美には思えなかった。
女だって時には解放的気分になる。
旅先だけの甘い一時を過ごしたくなる。
そんな女の性を理解する男は、案外に少ないのだと、和美は祐之先輩を見て思った。

そんな瞳に勘違いをしたのか、祐之先輩は和美の手を取り、小道から外れた方向へと引っ張って行く。
「こっちて、コースじゃないですよ!」
さすがに声を上げる和美に対して、祐之先輩は無言で歩みを進めていた。

握られる手が痛かった。
引かれる腕が強引で、和美は何度も前につんのめりそうになった。

月に雲が掛かり、辺り一面を闇に変える。
そんな、いかにも肝試しに打ってつけの環境なのに、和美は怖さを感じるどころでは無かった。

突然に歩みを止めた祐之先輩に抱き締められて、強引に唇が重ねられた。

「うううう!!ちょっと!ちょっと!祐之先輩!」

唇の端から、やっとの思いで声を荒げた和美に対し、
平常心を取り戻したのか、祐之先輩は端と身体を離した。

「わ・悪い・・・林と佐高に感化され過ぎたみたいだ・・・」

祐之先輩は下を俯きながら、足先で土を蹴っていた。

「もしかして・・・始めてのキス?」
和美はまさかとは思ったが、そのあまりの拙さに疑問を感じずにはいられなかった。

祐之先輩は和美に背を向けると、大きく伸びをした。
雲が動き、出た月がその身体に影を作った。

「ああーーードラマみたいにはいかないなーーーー」

祐之先輩の声は闇夜に木霊し、どこか悲し気に、和美には聞こえた。
来た道を戻る祐之先輩は、恥ているのか、振り向きはしなかった。
和美は21歳の祐之先輩が、今までキスすらしたことが無かったことに、
驚きはしたが、そういう事もあるのだと、納得もした。

それは単に、機会の問題であって、
どんなに容姿が良くても、どんなに性格が良くても、その機会に恵まれ無い人は、
男女問わずして案外多いという事を、祐介に限らず、周りを見て知っていた。
そして、その為だけに風俗に行く男よりも、先輩はずっといいと思えた。

「林もさ…童貞なんだよね。どっちが先に男になれるか?みたいなとこがあってさ…
ガキと変わんねーだろ?…笑ってくれ…」 
やけになった、祐之先輩の口調は荒々しかった。

「笑う訳ない…祐之先輩の真面目なとこ、サークルの皆だって、偉いと思ってる。
好きだって思う女の子だって絶対にいる。」

「慰めんなよ…」

「慰めなんかじゃ無い。興味や好奇心だけで性欲に傾かない先輩は、男として凄いと思う。
意外かもしれないけど、女って、男の性遍歴なんて気にしない、
例え経験が無くても、その時、ちゃんと自分を見てくれるなら、そんな事は関係無く思えるの…」

「頼り無くは思わないのか?」

「先輩が思う程、長けた男なんて、そうはいない…
100人と寝た男だって、自分本意なセックスしか出来ない男だっている…
そんな男とするだったら、初めての男の方がずっといいと…
女なら誰だってそう思うは…」

「多くの女と寝たいと思うのは、つまらない男の見栄なのかもな…」

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