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恋愛リレー小説 - 理想の恋愛

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「え゛… いません …けど」
私は俯き加減に小さく呟いた。
別に彼氏がいるから偉いもんじゃないのは分かってはいたが、
"いない"と言う言葉のどこかに、敗北にも似た、少し寂しい響きが含まれている気がしていた。

「じゃあ好きな人は?」
しつこく聞いてくる祐之先輩を怪訝に思い、私の目は泳いだ。
林先輩が真実の腰に腕を回しているのが見えた。
遠くで上がる煙が空に白く漂っていた。
その出所に視線を落とす。
ぼんやりとした視界の中で青年は、退屈そうに紫煙をふかしていた・・・
"・・ぁ・・"
その囁きが祐之先輩に聞こえたかどうかは分からない。
それでも私は佐藤洋平を見て、小さく声を上げていた。

自分の声が耳に届くと、それは声を上げるほどのことは無かったと、私は自分自身を窘めた。
佐藤洋平は木に凭れ掛かり、ただ煙草を吹かしているに過ぎなかったのだ。
それはごく普通に見る光景と何ら変わるものではなかったし、
佐藤洋平が自分と同じ歳にも関わらず、喫煙する姿は今までに何度も見ているものだった。

ただ・・その時の佐藤洋平は1人だった。
周りに大勢の人がいるにも関わらず、ただ・・独りだった。

それは常にハイテンションで、何時も輪の中心にいる"軽い"佐藤洋平ではなかった。

「ん?どうかした?」
祐之先輩の声で、私は佐藤洋平に対して抱いたその思いから、現実へと引き戻された。

先輩は私の視線を追うようにして、佐藤洋平を見つけた。
「おっ。洋平じゃん。1人だなんて珍しいよな」
「先輩もそう思いました?」
「ああ。洋平はモテるからな」
「そうなんですか?」
「我が演劇部で一番のイケメンだろ?」
「そんなことも無いと思うけど・・」

髪の毛は、キレイなサラサラではあるけれど、
それ以外は顔だって、身体だって、到って普通としか和美には思えなかった。

「まあ、誰もが認めるイケメンって訳でもないだろうけど、モテるのは事実だぜ」
「そうなんだ。。。なんか頼りがいは無さそうだけどな。」
「それが母性本能をくすぐるんじゃねーか?かわいいタイプの男は得だよなぁ〜」

確かに祐之先輩の外見を見る限りでは、"かわいい"という言葉とは、縁遠いだろうと、思わざるおえなかった。

「和美ちゃんの好きな奴って、もしかして…洋平なのか?」

先輩のその言葉に、私は白気た気分になった。
それが余りに、馬鹿馬鹿しく思えて、驚くこともできなかった。
それは、大学生男子にありがちな、身内同士でペアを作りたがる、
そんな世間を知らない子供染みた質問にしか、私には思えなかった。

「何言ってるんですかぁ〜 私は内田 篤人タイプよりも、長谷部 誠の方が好きですよ」
腹では興醒めしていながらも、表面では至って女の子らしく語尾を伸ばして先輩に返した。

そんな事を言っておきながら、私は特別に長谷部 誠のファンと言う訳でもなかった、
増しては内田篤人に佐藤洋平を重ねること自体、内田篤人ファンには申し訳ないような気もした。
ただ先週テレビで観戦した全日本の試合で、長谷部と内田の喜びの抱擁シーンが、妙に脳裏に残っていただけだった。

それでもこの2人の例えは、満更間違ってもいないような気はしていた。
2人ともイケメンではあるが、全く両極端にある内田篤人と長谷部誠。
佐藤洋平がどちらに属するかと言われれば、それは内田篤人に類するとしか思えず、
自分がどちらを彼氏にしたいか?と問われれば、長谷部誠と答えているだろう自分が、想像はできた。

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