そう思っていたら理彩のかおいろが変わった。
「って……ありゃ、久しぶりにあのこ来てるよ？黒田帰ってきたからかなあ？」
見ると伊織ちゃんだった。


「あの…先輩、話があるんですけど…ちょっと来てもらえますか？」
「ん？　どうしたの伊織ちゃん、なんかシリアスな顔してるけど…」

「綾先輩…あたし、あたし・・・・・・やっぱり黒田先輩のことがっ・・・好きなんですっ！！黒田先輩の笑顔を見る度に胸が苦しくて苦しくて・・・それで・・家に帰っても先輩が頭から離れなくて・・・だからっ！　その・・黒田先輩を私に譲って下さい！！！」

「えっ？！　そ、そん　な　別に　私は…」

（うん…いつかこうなると思ってた。…でも……今の私は…黒田が…　どうしよう…）

「綾先輩！！お願いします！」
（伊織ちゃんはおとなしそうな子に見えたのに、こんなに素直になるなんて……そんなに黒田の事が好きなんだ…。）
「このごろ、なんか綾先輩と黒田先輩が付き合ってるって噂聞いて…ホント我慢できなかったんです！…綾先輩？………黒田先輩と付き合ってるんですか？」
「…付き合ってないよ。」
どんなに仲よくても、一緒に帰っても、私と黒田は付き合ってない。
「よかったぁ…じゃあ、黒田先輩を私に下さい！」
（真剣な顔をした伊織ちゃん……前の私だったら応援したいけど、今はそんな気持になれない…）
「ごめんね。黒田は物じゃないし、“下さい”って言っちゃ駄目だと思う…。しかも私、伊織ちゃんの事応援できなくなっちゃったんだ…」

「………え？それって…」
伊織ちゃんは意味がわかったのか、少し黙って下を向いた。
「ス…好きになっちゃったみたい！」
「…そうですか。」
伊織は少し黙ったあと顔をあげ、意外にも綾に笑いかけた。
「…じゃあこれからわ綾先輩を頼らないで黒田先輩をふり向かせますから！負けませんよ？綾先輩♪」
「うん、ありがとう。ごめんね？」
「いえ、これからはライバルですよ。私、負けませんから！」