PiPi's World 投稿小説

四葉のクローバー。
恋愛リレー小説 - 青春

の最初へ
 34
 36
の最後へ

四葉のクローバー。 36


それって、もしかして俺のことか?
ま、勘のいい由香でもそれは、一生わからないかもな。
俺も、指定席となっている席に座った。
由香は、丁度その向かい側にゆっくり椅子をひいて、
腰をおろした。
なごやかに喋りを交えながら食事は進んでいた。
母の作る飯しか、今までほとんど食べたことないが、
一番美味しいと思える。
(本人には絶対言わない)

「そういえば、ちょっと聞きたいんですけど」
話がちょうど途切れたとき、由香がそう言った。
母は俺には絶対向けない優しい笑顔で答える。
「なにかしら?」
「手紙出したいんですけど、このあたり、
ポストどこにあります?」
そうね。と母は首をかしげた。
俺は、大好物のさばの味噌煮の味をかみ締めている
ので、話にはあえて入らない。
「確か、池田さんちの30メートル先だったかしらね」
そんな説明でわかる人いるか。
「・・・・・・・・・・・・」
「・・・・・・・・・・・・」
って、なぜそこで会話が終わるんだ。
心でそう突っ込みながら、何も言わないでいると、
「と、といってもわからないわよね」
「すいません、まだこの辺りは理解してなくて」
「あの辺はとくに目印ないし。結構遠いのよ」
いやな予感がする。
長年のパターンを見出した結果……
早く食べて逃げたほうがいいと頭は指令している。
「敬太くん」
ほら、来た。
母にわざとらしいくらいの優しさを含んだ声で呼ばれたときは、
覚悟を決めないといけない。
とくに、名前に「くん」がついたら、百パーセントの確率で。
「何?」
「その顔はわかってるみたいねっ」
向こうも長年のパターンで見出したらしい。
「……わかりません」
「うそおっしゃい!」
あまり母は由香の前でとりつくる気はないらしい。
いつも通りだ。
「わかりました」
「……よろしい」
「ッフフ」
この様子をベタなホームドラマを見るような微笑ましい表情をしていた由香が笑いを堪えていた。
体が小刻みに揺れて、口を上品に抑えている。
俺の視線に気づくと、笑みを浮かべた。
「敬太くん。お願いしますっ」
「うん。……夕飯食べ終わったら案内するよ」
「ありがとう」

本性を知っていても、由香を可愛いと思ってしまう
自分は、浅はかなのだろうか。
まぁ、仕方ないか。そう、自分に言い聞かせる。

SNSでこの小説を紹介

青春の他のリレー小説

こちらから小説を探す