四葉のクローバー。 34
「……そう、良かった」
不安げな顔にいつもの明るさが戻った。
「……………」
由香は、フフッと笑みを浮かべると、
部屋に戻って行った。ガタンと軽く閉まる音がする。
「ご飯できてるから、早く着替えてきなさい」
取り残されたように廊下にいる俺に母が言った。
そうか、俺まだ制服だったんだ。
着替えようと、ドアのノブに手をかけた瞬間だった。
制服?頭に、ある不自然な状況が浮かび上がった。
俺は部屋に入るのを諦め、
駆け足である場所に向かった。
「あれ、まだ着替えてなかったの?」
俺は、母がいるはずの台所に行った。
案の定、母は夕飯の盛り付けをしていた。
「ちょっと聞きたいことがあるんだけど」
「何?あ、ちょっと、これでテーブル拭いとい
てくれる?」
ふきんを手渡された。
忙しいから後にしてくれる?と遠まわしに言われた
みたいだな……。
仕方ないので、テーブルを時間かけて丁寧に拭いた。
TVが付いてないので、リビングはひっそり静かだ。
「これ、熱いから気をつけるのよ!」
「落とすんじゃないわよ!」
結局、話を聞こうと台所に行くたびに、
用を言いつけられた。
仕方ない、後にするかってその場に留まっていよう
ものなら「敬太!!」と大声で呼ばれる。
とほほ……先に着替えとけばよかったな。
「はい、これで最後。終わったら着替えてきなさい」
箸やスプーンが入った籠を渡される。
「あー助かった。敬太が手伝ってくれるなんて、
珍しいわねー」
自分が頼んだんじゃないか……。
肩にずっしりと、くるものを感じながら部屋に
戻ろうとした。
「あ、敬太」
母が台所から廊下に出てきた。返事する気力がない。
「そういえば、さっき何か聞きたいことあるって言っ
てなかったっけ?」