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嘘から始まる恋ゴコロ
恋愛リレー小説 - 青春

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嘘から始まる恋ゴコロ 9

 驚いた勢いでなにも考えずに部屋に入ったけど、祐にあわせる顔がない。あたしは祐の視線を避けるよう顔をそむけながらドアの前に突っ立っていた。
 どうしよう、どうしよう、どうしよう。
 よくまわらない頭でぐるぐると考える。
「――さっきはごめん」
 なぜかあやまられてあたしは困惑する。どうして祐があやまるの? 悪いのはあたしなのに。どう返していいのかわからず黙ったままでいると、背後から場違いなほど陽気なお母さんの声が響いた。
「アイスティーでよかった?」
 お母さんはドアの前をふさぐあたしを肘でおしのけ部屋に押し入った。両手で持ったお盆のうえにはアイスティーがふたつとお菓子が載っている。
「汚い部屋でごめんなさいねぇ。そんなところに立ってないでどうぞ楽にして。そうそう、矢口くん。よかったら夕飯食べてって?」
「いえ、すぐ失礼しますのでお構いなく」
 祐は委員会のときと同じ畏まった声を出して頭を下げた。祐の返答にお母さんがなにか言おうとしたのを、「お母さんっ!もういいから」と、お盆を引ったくり強引に部屋から締め出してドアを閉めた。
「ごめん……うちのお母さん、お客さんが来るとはりきるんだ。あの、座って?」
 あたしはお盆をミニテーブルのうえに置き、座布団変わりのクッションを出した。それから、読みかけの雑誌や朝ベッドのうえに脱ぎ散らかしていったパジャマをそそくさと片付けた。こんな汚い部屋を祐に見られたなんて恥ずかしくて死んじゃいそうだ。
「そっ、そんな見ないでいいよっ。ほんと汚いからっ!」
 祐が物珍しそうにしているので、あたしは祐の視線を遮るように両手をぶんぶん振った。
「ああ、ごめん。なんか渚っぽい部屋だなって思って」
「うそぉ……あたしってそんな部屋汚なそうなイメージ?」
 ショックを受けて肩を落としたら祐がくすっと笑った。
「そうじゃなくて、女の子っぽくてかわいい部屋だと思っただけ」
 祐はときどき歯の浮くような台詞をさらっという。真面目な顔でそんなことを言われ、あたしは恥ずかしいのとうれしいのとでドキドキして「ありがと」と小声で言った。
「あ、そうだ。渚にこれ渡そうと思って来たんだった」
 祐は学校カバンからラッピングされた小さな袋を取り出し、それを差し出してきた。
 あたしは不思議に思いながらそれを受け取り、「開けてみて」という祐の言葉に促され中を見た。
「……どうしたのコレ?」
 中にはキラキラのハートの飾りがついたゴムが入っていた。
「俺、そういうのよくわかんなくて、渚に似合いそうなの選んだんだけど……」
「え? あたしに? なんで?」
 思いがけない突然のプレゼントにびっくりして祐を見ると、祐は「ごめんね」と、なぜかまたあやまってきた。
「あの……さっきから、なんで祐があやまるの?」

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