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嘘から始まる恋ゴコロ
恋愛リレー小説 - 青春

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嘘から始まる恋ゴコロ 1


「有賀 渚さん。俺も、ずっとあんたのことが好きだったんだ・・・!」
放課後の自転車置き場、ふいに呼び止められたと思ったら突然告白された。
(・・・誰?この人?見たことはある気がするんだけど・・・。)
なにがどうなっているのか分からず、あたしは呆然としていた。
「あのぉ・・・。」
おずおずと尋ねようとしてふいに彼の手元に目が行き、血の気がサァーっとひいた。

(なぜにあなたがその手紙を持っているのぉ!?)

彼が手にしていたのは、夕べ何度も書き直し今朝隣のクラスの片思い中の彼杉山 翼の下駄箱に入れた・・・ハズの手紙。
突然の告白の原因がわかったあたしは、目の前が白くなるのを感じた。
(手紙・・・入れるトコ間違えたあぁっ)
  
「俺・・・。図書委員で、一緒になった時から有賀さんのことずっと見ていたから・・・手紙、すごく嬉しかった。」
彼はうっすら耳を赤く染めながら満面の笑みで言った。




不覚にも、胸が高鳴る。
だけど・・・言わなきゃ、間違いだって。
頭ではわかってる。
ごめんなさい。渡す相手間違えました。
たった一言なのに出てこない。
視線を合わせないあたしを照れている、と勘違いしたのか
「これから、よろしくね。」
と言って手を差し出した。
あたしは、無意識にホント無意識にその手を握り返し
「・・・はい。」
と言っていた。

その後のことはあまり覚えていない。
ただわかったのは、彼の名前が矢口 祐ということ。
彼が・・・あたしの彼氏になったということ。
「なんでこうなるのぉ。」
あたしは部屋に入って頭を抱えた。
自分のボケっぷりに怒りを通り越して脱力してしまう。
「だいたい、学校が下駄箱に名前付けておかないからこんな事になっちゃったんじゃんっ。」
結局、怒りの矛先は自分を棚に上げて学校に向かった。

「でも・・・。あの顔は、反則でしょ。」
手紙、嬉しかった。そう言った時の彼の笑顔は思わず見蕩れてしまうほど、甘くて綺麗だった。
思い出すだけで、顔が赤くなる。
同じ図書委員の祐は、寡黙で笑顔をあまり見せない目立たないイメージをあたしは持っていたから。
(だから、最初誰だったか思い出せなかったんだけど。)
あんな笑顔を見せるなんて思わなかった。
「もぉ、今更間違いなんて言えないよ〜。」
はぁ、っとため息を吐きベットに体を投げる。

ベットで暫くごろごろ転がってはた、と大事な事を思い出した。
「・・・遅かれ早かれ翼にばれて、からからかわれるよね。」
祐と同じクラスだし。あたしと翼は友達のままだし。
からかわれたらかなり凹むんだろうな。

そう、あたしと翼は中学の時からの友達。
今は隣のクラス、とはいえ翼は特進科だから校舎が別になっている。仲はいいけど、校舎が違うせいか以前より会えなくなってきてどんどん遠くに行ってしまう気がした。
だから、焦りを感じて告白する決心をしたんだけど、直接言えなくて手紙に自分の気持ちを託した。託したとはいえ 
 ーずっと好きでした。付き合ってください。 渚ー
何度も書き直したのに、お粗末な内容。まさか、間違えて入れるなんて思わないから宛名は書かなかった。
「明日から、どうなるんだろ・・・。」




=次の日=
「おはよ。」
家の傍にある電柱に背を預けた祐が左手を軽く上げて挨拶をしてきた。
今まで意識したことなかったから、気がつかなかったけど祐はかなりかっこいい部類だ。
電柱に凭れ掛かっているだけなのに思わず見蕩れてしまった。
何も返事をしてこないあたしを不審に思ったのか、ゆっくりこちらに近づいて腰を曲げ顔を覗き込む。
「うぁっ!」
びっくりして後ずさりしてしまう。
ドキドキ胸が高鳴る。
「どうしたの?もしかして朝弱いとか?」
あたしは慌てて頭をぶんぶんと横に振った。
「違っ・・・。その、驚いて。矢口君がいたことに。や、約束とかしてなかったし。」
祐は少し寂しそうな顔をして
「迷惑だったかな?」



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