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嘘から始まる恋ゴコロ
恋愛リレー小説 - 青春

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嘘から始まる恋ゴコロ 8

 あたしはずるい。祐に本当のことを言わないで、しかもあんなふうに逃げ出して。
 真っ直ぐ家に帰る気分にもなれなくてふらふらと駅のほうへ向かった。これからどうしよう。亜紀に電話しようかとも思ったけど、でも、今のこの状況をなんて言葉にしたらいいかわからなくて結局ひとりで歩きつづけた。
 祐、怒ってるかな。きっとすごい自分勝手なやつだと思ったよね。いきなり泣き出して、そのうえ祐のことほっぽってきちゃったんだから。
 恐々携帯の着信履歴を確かめたけど祐からの着信はなかった。どうしてか胸の奥がチクリと痛む。
 携帯を握ったまま立ちつくしていたら、「な〜にやってんの?」と顔をのぞきこまれた。びくりとして視線をやると翼がいた。クラスの子たちとこれからカラオケに行くんだと翼は言った。
「それで、なぎはこんなとこでなにしてんの? あ、もしかして矢口と一緒?」
 あたしは首を左右にふって返事をした。
「元気ないじゃん。どーした?」
 翼の顔を見れない。見たくない。うつむいたまま黙りこくるあたしの頭を翼はくしゃっとなでた。
 元気がないとき翼はいつもこうやって励ましてくれた。でも、なんでだろう。今日は元気になるどころか逆に苦しくなるばかりだ。
「悪い。俺、ちょっと抜けるわ」
 翼は友達にそう言い、「送る」と、あたしの肩をたたいた。
  
  *
  
  
 会話のないまま駅前通りを抜け、そのまま黙々と歩きつづけた。人通りが少なくなり、辺りが静寂に包まれたころ、翼が沈黙を破った。
「矢口とケンカしたのか?」
「……違うよ」
「亜紀とケンカしたのか?」
「違う」
「じゃー、アレか。ママに怒られたか?」
 翼の言い方に思わず、ぷっと小さく笑った。翼はあたしのおでこをぺシっと叩いて、「まー、元気出せや」と笑った。
「翼……ありがとう」
「どーいたしまして」
 家の前まで送ってもらい翼と別れた。あたしは翼の後ろ姿が見えなくなるまで見送り、家に入った。
「ただいま」
 ふと視線を落とした先に見覚えのある靴を見つけ、あたしの心臓は飛びあがった。
 嘘でしょぉ。この靴って……
 靴を見たまま固まっていると間もなくエプロン姿のお母さんが現れ、にこにこと口を開いた。
「おかえり。渚にお客さん来てるよ。部屋に通しておいたから」
「う……そぉー」
 意味深な笑みを浮かべるお母さんを押しのけるようにしてあたしは階段を駆けあがった。部屋のドアを開けると、そこには祐が手持ちぶさたなようすでいた。
  
  *

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