嘘から始まる恋ゴコロ 7
「そっか。ありがとね。バイバイ」
篠崎さんは愛想よく手を振って友達のところへ戻っていった。
綺麗なのに変わったひとだなぁ。
それがこのとき、あたしが篠崎さんに対して抱いた第一印象だった。
*
委員会の帰り、祐とふたり並んで歩く。祐はあたしが歩きやすいようにゆっくり歩いてくれる。ホントに優しいんだなぁ。祐の優しさをひとつ、またひとつ、と、発見するたびに罪の意識に苛まれる。あたしはこのひとを騙してるんだ。
こんな優しいひとを騙してていいのかな? やっぱり本当のことを言ったほうがいいような気がする。あたしが好きなのはあなたじゃなくて翼なんだよ……って。
意を決するようにぎゅっと目をつぶり、口を開いた。梅雨時の湿気をふくんだ空気が乾いた口のなかに吸いこまれてく。
「あのね……あの――」
目を開け、祐の顔を見るとどうしてか胸が苦しくなった。「なに?」って祐。柔らかい笑みを向けられて言葉につまってしまう。
「えっと、うん……梅雨って湿気があってやだな」
祐は、「どうしたの急に?」って苦笑してる。
「だから……そう。あたし、くせっ毛なの! だから雨の日とか髪の毛がボワってなってやだなぁ〜って」
こんなこと言おうと思ったんじゃないのに。あたしの意気地なし。バカ。最低。
心のなかで自分をなじって、祐にあやまった。あたしなんか祐に好いてもらう資格ないのに。苦しくて涙がでそうになってきた。
祐は声をあげて笑って、「いいじゃん。渚だったら髪の毛がボサボサでもかわいいよ」
あたしの頭をくしゃくしゃっとかき混ぜる。その大きな手が翼のそれと重なる。
「渚……どうしたの?」
目の前にある祐の顔が涙で霞んで見える。変なの。あたし、なんで泣いてるんだろう。なんでもないよって笑おうとしたけど、喉がつまって声がでなかった。
「ごめっ……ん。ごめんなさい」
それだけ言って、祐の前から逃げ出した。
*